「慢性腎臓病は低栄養になりやすい!?食事を楽しむコツ」(児玉 佳菜)
腎臓には血液のろ過、尿(老廃物)の排泄だけでなく血圧や体液量の調整・維持、ホルモンやビタミンの産生・活性化の働きがあります。そのため腎障害が起こると不要な老廃物が体内に残ったり、血圧が上がりやすくなったり貧血を起こしやすくなったりします。このため腎臓病の食事は高血圧にならないよう塩分、腎臓に負担がかかりすぎないようたんぱく質、エネルギーの過剰摂取・不足にならないよう適正なエネルギー、腎臓病のステージにもよりますがカリウムの摂り過ぎに気をつける必要があります。
このような話を聞いた方の中には極端に塩分を減らしすぎて味がないため美味しく感じず食欲低下に繋がる場合があります。また、肉や魚にたんぱく質が含まれていますが食べる量を減らし全身の筋肉量が低下してしまうケースもあります。カリウムの摂取量に注意が必要と言われると生野菜、果物、芋類を全て食べないようにされる方がいます。では、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
塩分について
塩分は調味料に含まれるものが多いため目分量で使用するのではなく、計量スプーンを使用し、多くならないようにします。小さじ一杯に含まれる塩分量を知ることは使い過ぎ防止にも繋がります。調味料を使用する量が減ると味付けが薄くなりますがそれを補うためにダシの活用、レモンやかぼす、酢などの酸味の活用、こしょうやわさびなどの香辛料の活用、しょうがやしそなどの香味野菜を活用することで味を補うことができ美味しく食べることができます。
たんぱく質について
たんぱく質には動物性と植物性のたんぱく質があり、肉・魚・卵・乳製品などのたんぱく質は植物性の飯、パンなどの穀物より筋肉や血液を作りやすいため動物性のたんぱく質は良質なたんぱく質と言われています。そのためたんぱく質制限がある中で良質なたんぱく質を摂るためには飯などに含まれるたんぱく質を減らすことが有効です。
その方法は治療用特殊食品の低たんぱくの主食を利用することです。通常の飯180gであればたんぱく質は4.5g含まれますが、低たんぱくご飯であれば約0.2gです。毎食低たんぱくご飯に変えることで12.9gも動物性たんぱく質を摂ることができます。このようにすることでメインのおかずの量を減らすことなくたんぱく質を少なくすることができます。
また、エネルギーの摂取が多くなると糖尿病や脂質異常症の原因となり腎臓の血管や動脈硬化を進行させてしまいます。逆に不足すると筋肉がエネルギー源として使用され老廃物が糸球体に過剰な負担をかけてしまうためエネルギーの調整は大切です。
カリウムについて
カリウムは水に溶け出すという性質を持っているため生野菜は小さく切り水にさらすことで食べることができます。また、生の果物はカリウムが多いため摂取できないと思われている方がいらっしゃいますが、1日でカリウム100mg程度であれば安心して食べることができます。腎臓を保護するために塩分やたんぱく質、カリウムの摂りすぎに気をつけなければならないのはもちろんですが食事は365日毎日続くため苦痛にならない必要があります。
最後に
食事は治療の一環であるとともに楽しみ、生きがい、コミュニケーションツールであるということを忘れず、日頃はきちんと腎臓病食を摂るようにしても旅行や外食の際はその前後で調整をし、多少であればいつもより食事量が多くなってもその楽しみに向かって日頃の食事療法を続けられるようにしていくことが大切です。
筆者
患者さまとどのように接しているか
対話をしながら実践可能な食事内容を探しています
卒業した学校
九州栄養福祉大学
好きな食べ物
からあげ