カルシウムを摂っていると骨は強くなりますか?(柴田 彩)
骨粗鬆症による骨折をするとどうなるの?
みなさんは骨粗鬆症と聞くとどのようなイメージをお持ちでしょうか。骨がもろくなり折れやすくなると言われていますが、骨折をするとその後は今まで通りの生活を送ることができるでしょうか。骨粗鬆症による骨折は日常生活に支障をきたし、要介護や死亡のリスクが上昇すると言われています。令和4年国民生活基礎調査の概況では介護が必要となった主な理由として1,認知症(23.6%)、2,脳血管疾患(19.0%)3,骨折・転倒(13.0%)と報告されています。これらのことから骨折・転倒は、脳卒中や認知症などと同じく要介護の大きな原因の1つであることが分かります。特に太もものつけ根を骨折すると歩けなくなるため、そのまま寝たきりになることもあるので注意が必要です。また骨粗鬆症による骨折は、骨折をすればするほど次の骨折が起こりやすくなります。そのため自立した生活を送る上で骨粗鬆症を予防し骨折を防ぐことが重要になります。
骨を強くする食事とは?
栄養面で骨粗鬆症といえば、カルシウムが取り上げられることが多いですが、1つの栄養素だけ摂っていても骨は強くなりません。カルシウムだけではなく、エネルギーをはじめ、たんぱく質、ビタミンD等多くの栄養素が関与しているため、特定の栄養素のみを摂取するのではなく、まずはバランスよく摂取することが重要です。今回は、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」と「日本人の食事摂取基準」に記載されている代表的な栄養素であるカルシウムとビタミンDとビタミンKについて紹介します。
各栄養素ごとの推奨量と役割、1回に摂取する量を目安に含有量が多い食材が以下になります。
□カルシウム
カルシウムは骨の主な成分であり、骨量の維持によって骨折の予防が期待されています。カルシウムは魚介類、乳類、藻類に多く含まれますが、比較的吸収率の低い栄養素として知られており、成人の場合で見かけの吸収率は約25%程度であり、食品群別のカルシウム吸収率は牛乳(普通牛乳)39.8%、小魚(イワシ,ワカサギ)32.9%、野菜(小松菜,モロヘイヤ,オカヒジキ)19.2%と食品でも異なります。その他様々な要因も影響を及ぼし、国民健康・栄養調査の結果からも骨粗鬆症予防に推奨されているカルシウムを日本人は全年齢において不足しています。また、嗜好だけではなく乳糖不耐症のため牛乳や乳製品を避けている人もおられます。牛乳を飲んで腹痛や下痢などを起こす人は、成人の20-25%に達すると報告されています。乳製品以外からのカルシウムの補給やカルシウム強化食品なども取り入れていく必要があります。
□ ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を高めるためにも積極的な摂取が望ましい栄養素です。ビタミンDは魚介類、きのこ類に多く含まれる一方、食品からの摂取だけでなく紫外線にあたることにより皮膚でも産生されます。ビタミンDは骨形成の促進やカルシウムの吸収を促進することから、骨の健康には不可欠な栄養素になります。しかし日本人の98%がビタミンD不足という報告もあり、特に高齢女性で不足している者が多いことが報告されています。食生活の変化に伴う魚離れや必要以上に紫外線を避けすぎていることが原因として指摘されています。
□ ビタミンK
ビタミンKは脂溶性ビタミンの1つであり、血液凝固のほか、骨形成を調整する働きがあります。ビタミンKは納豆やブロッコリー、緑の葉物野菜に多く含まれています。また脂溶性であるため、熱に強い性質を持ち炒めものなど油を使った調理でさらに吸収がアップする性質があります。カルシウムと比べてビタミンD、ビタミンKの認知度は低いですが、カルシウムだけではなくビタミンD、ビタミンKも骨に重要な栄養素となります。また、ワーファリンを内服している方は納豆や青汁等の摂取を行わないよう注意が必要です。
やってみよう!!! カルシウムアップの工夫例
【おすすめポイント】
調理工程が少なく和えるだけで調味料を利用せず作れます。
紹介した栄養素(カルシウム、ビタミンD、ビタミンK)がバランスよく摂れます。
まとめ
カルシウムだけではなくビタミンD、ビタミンKをはじめ様々な栄養素をバランスよく摂り丈夫な骨を作りましょう。
参考文献:
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会編: 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版 http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf(accessed 2024-11-19)
・上西一弘,江澤郁子, 土屋文安, 他: 日本人若年成人女性における牛乳, 小魚 (ワカサギ, イワシ), 野菜 (コマツナ, モロヘイヤ, オカヒジキ) のカルシウム吸収率. 日栄・食糧会誌, 1998. 51: 259-266
・厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (accessed 2024-11-17)
筆者
患者さまとどのように接しているか
食習慣やこだわりは尊重しつつ、実践につながる提案となるよう心がけています。
卒業した学校
大阪青山大学
好きな食べ物
いくら