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知らぬ間に忍び寄る低栄養!早めに気付いて対策を。【唐木 由喜】

高齢期は生活習慣病予防からフレイル予防にシフトチェンジ

 私は長年、病院の管理栄養士として、多くの患者様に栄養指導を行ってきました。
20年以上指導を継続している方もいますが、壮年期は生活習慣病改善・予防に取り組んだものの、高齢期になればフレイル予防にシフトチェンジしていく必要性があります。
しかし、長年の意識や習慣はなかなか変えられない方も多く、年齢を考慮した適切な食生活へ導いていくように日々努めています。

フレイルって、なあに?

 さて、皆様も一度は耳にした事があると思いますが、フレイルとは何の事かおわかりですか?
フレイルとは、高齢期に体力や気力、認知機能など、からだとこころの機能(はたらき)が低下し、将来介護が必要になる危険性が高くなっている状態をいいます。つまり、フレイルとは、「健康」と「要介護状態」の“中間の状態“といえます。
 いくつになっても健康で自立した生活を送り、活動的に過ごすためには、健康寿命を延ばすことが大切です。フレイル状態の改善やフレイル予防の取組を行うことは、健康寿命の延伸に良い影響を与えると期待されています。

図2 フレイルとは?1)

早めに気付いて対応すれば良かった・・・(実体験)

 ライフステージの変化とともに食生活も変化していきますが、高齢期にはたんぱく質やビタミン・ミネラル不足等の栄養の偏りがみられる方もいらっしゃいます。「年だから仕方ない」「好きなように食べて暮らしたい」と言う本人の考えを尊重する事は必要ですが、何もせぬまま時が過ぎてしまい低栄養・フレイル状態になってしまった事例を経験したのでお話しします。

 私には離れて暮らしている高齢の親がおり、月1回ほど訪問して様子をみていました。
最近は咀嚼困難・食事量減少の訴えが多くなり、ムセや痰がらみ等も気になっていたところ、ある日突然、誤嚥性肺炎で救急搬送されました。幸いにして2週間ほどで軽快し退院する事ができましたが、低栄養や誤嚥リスクに気付けず対応出来なかった事を深く反省しました。
この経験を通して私は、低栄養やフレイルに対する予防の大切さと、低栄養リスクがある場合は早期から介入する必要性を実感しました。

フレイルチェックしてみよう!

 皆様も、自分や家族がフレイルのリスクがあるか気になりますよね。厚生労働省より「食べて元気にフレイル予防」3)というパンフレットが出ているので、一度ご覧いただくと良いかと思います。その中に15項目のフレイルチェックリストがありますが、今回は特に食習慣と体重変化と口腔機能について取り上げてみたいと思います。
回答結果が黄色になった質問が一つでもあるとフレイルのリスクが高まります。

厚生労働省「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第3版2)


体重変化に関してフレイルリスクがある場合の対応

 栄養の設問で、「1日3食きちんと食べていますか」で「いいえ」と回答した方ですが、欠食は低栄養のリスクとなります。1日の食事が2回以下の人は、3回食べている人と比較して、栄養素が不足したり、偏ったりする傾向があります。1日2回の食事の場合、間食を取り入れて不足する栄養素を上手に補うようにしましょう。また、食べる食品の種類が少ないと、低栄養につながります。

 次に、「6ヵ月間で2-3kgの体重減少がありましたか」で「はい」と回答した方ですが、体重の減少は要介護の発生率が高くなります。無理な食事制限には注意が必要です。欠食や食事がしっかり取れていない場合は、間食を取り入れたり、配食弁当、食材の宅配、日持ちする缶詰やレトルト等を利用してみたり体重維持に努めましょう。
やせた理由が不明、または体調不良が原因の場合は、かかりつけ医に相談してみてください。

口腔機能に関してフレイルリスクがある場合の対応

 口腔機能の設問で、「半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか」で「はい」と回答した方は、咀しゃく機能が低下している可能性があります。咀しゃく機能の低下は、食べられる食品が限られ、低栄養へとつながります。最近、柔らかいものばかり食べているということがあれば、普段の食生活を見直してみましょう。また、歯科治療や口腔機能訓練により咀しゃく機能は改善します。

 次に、「お茶や汁物でむせることがありますか」で「はい」と回答した方は、飲み込む機能が低下している可能性があります。むせは、誤嚥性肺炎や窒息のリスクにつながります。食事に集中し、よくかんで、しっかり飲み込むようにしてみましょう。食事形態の調整により、誤嚥リスクが軽減されるので、医師や管理栄養士に相談してみましょう。

まとめ

 高齢者の食生活は様々な要因で変化し、栄養状態に直結します。重度の低栄養やフレイルになると、回復に時間がかかり困難です。日頃からフレイルチェックを取り入れて、早めに気付いて適切な取り組みを行う事が重要です。栄養面で心配事がありましたら、近隣の病院の医師や管理栄養士に相談してみてください。

参考文献)
1) 横浜市.フレー!フレー!フレイル予防!リーフレット
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigoyobo-kenkoudukuri-ikigai/kaigoyobo-kenkoudukuri/kaigoyobou.files/0070_20220720.pdf,令和4年7月発行
2)厚生労働省.高齢者の特性を踏まえた保健事業 ガイドライン第3版より
  図表-6 「後期高齢者の質問票」の内容について一部抜粋・編集
  https://www.mhlw.go.jp/content/001240315.pdf,令和6年3月発行
3)厚生労働省.食べて元気にフレイル予防
  https://www.mhlw.go.jp/content/000620854.pdf

筆者

医療法人社団恵生会 上白根病院
管理栄養士 唐木 由喜

患者様とどのように接しているか

家族に接するように、親身なアドバイスを心掛ける。

卒業した学校

実践女子大学

好きな食べ物

お寿司・豆腐