ヘルシーエイジング 「たんぱく質」のとり方(五味 郁子)
「フレイル」という言葉、最近あちこちで耳にするようになりましたよね。介護予防や「筋肉を落とさないように」ということの大切さは分かりつつも、正直、気疲れしてしまうこともありませんか。
そんな方にぜひ知っていただきたいのが、「ヘルシーエイジング」という考え方です。
ヘルシーエイジングとは、「歳を重ねても自分らしく、生き生きと暮らし続けること」を目指す前向きなアプローチです。
街中や身近なところで、「確かに歳はとったけれども、あの人、すごくバイタリティがあるな」という人がいますよね? 実は、このバイタリティ(Vitality、活力)こそが、ヘルシーエイジングの大きながカギとなっています。
● 自分らしく・・・ウェルビーイング
ヘルシーエイジングは、世界保健機関(WHO)が提唱したものです。ここで言われる“ヘルシー”とは、単に“病気がない状態”ではなく、生活の質(QOL)や精神的にも社会的にも満たされているという「well(良い)」+「being(状態)」=ウェルビーイングを意味しています。
さらにWHOは、高齢者のバイタリティ(Vitality、活力)の要因として「栄養」が重要であるとしています。
①食事少ない+身体活動も少ないと、筋肉量や筋力の低下につながる
②体重減少や、筋肉量の減少を予防するために、十分なたんぱく質を摂取すること
③十分な量のバランスのとれた食事は、エネルギー・たんぱく質だけでなくビタミンやミネラルもとれる
● 高齢者にはたんぱく質がもっと必要な理由
たんぱく質は、筋肉、臓器、皮膚・髪・爪などの体の構成成分で、ホルモンや酵素、免疫機能などの成分として重要な役割を果たしています。体のなかのたんぱく質は、筋肉などへの“つくる(合成)”と“こわす(分解)”が繰り返されています。食事が十分にとれていないと、“つくる”より“こわす”が上回り、筋肉量が減り、痩せてしまいます。逆に、食事が十分にとれていれば、“つくる”が“こわす”を上回り、筋肉量の維持やアップにつながります。そして、高齢者では、たんぱく質を多めにとならないと、“つくるスイッチ”が入りにくいことが研究報告されています。
● どれくらい摂ればいいの?
どれくらいの量のたんぱく質をとれば、筋肉量が増えるのかについては、明確な答えは得られていませんが、痩せが気になる方は、体重1kgあたり1.2~1.5g(体重60kgの人で約70~90g)のたんぱく質を日常的に摂取できると良いでしょう。
● 注意したいポイント
食事(たんぱく質のとり方)以外に筋肉を“こわす”要因があります。それは、体のなかで病気や炎症がある場合です。入院したときに、がくんと痩せて、ふらついてしまうのはそのせいです。病気のときは、食欲もなく、食事もあまり食べられないことがあると思いますが、食べやすい食品や栄養補助食品などを活用して、栄養を少しでも多く摂れるのが理想です。管理栄養士に相談してください。
また、持病(腎臓病など)によっては「たんぱく質制限」が必要なケースもあります。ご自身の体調に応じて管理栄養士から食事のアドバイスを受けてください。
日本人は、「主食」+「主菜」から、1日のたんぱく質摂取量の約8割をとっています。乳製品を含むと85%に及びます。毎日、主食と主菜、乳製品を組み合わせた食事をしていれば、バイタリティ(Vitality、活力)の源―栄養―「十分な量のバランスのとれた食事は、エネルギー・たんぱく質だけでなくビタミンやミネラルもとれる」ことになりそうです。
特に、たんぱく質を構成している20種類のアミノ酸のうち、ロイシンというアミノ酸が筋肉を“つくる”作用が強いとされています。ロイシンは、肉・魚・卵、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品に多く含まれます。牛乳・乳製品は、調理の手間もなくとることができるので、個人的におすすめです。お好みの牛乳やヨーグルトはありますか?

“LIFE”は、日本語で“命”、“生活”、“人生”と文脈によって意味が異なります。食事やウェルビーイングと組み合わせた場合、あなたがピンと来るのはどれでしょうか。

参考文献
World Health Organization. Decade of Healthy Ageing 2021–2030. WHO; 2020.
World Health Organization, 日本老年医学会(翻訳). ICOPEハンドブック:プライマリケアにおけるパーソンセンタードな評価と手順に関するガイダンス(日本語版). 日本老年医学会; 2021
Volpi E, et al. Essential amino acids are primarily responsible for the amino acid stimulation of muscle protein anabolism in healthy elderly adults. Am J Clin Nutr. 2003;78:250-258.
Katsanos CS, et al. A high proportion of leucine is required for optimal stimulation of muscle protein synthesis in the elderly. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2006;291:E381–E387.
大村卓也, 重本和宏. 高齢者におけるアナボリックレジスタンス. 日本臨床栄養学会雑誌. 2021.
厚生労働省. 令和5年国民健康・栄養調査報告.
筆者

教授 五味 郁子(管理栄養士)
患者様とどのように接しているか
ふだんは、患者の気持ちに寄り添える管理栄養士になってほしいと、学生教育に従事しています。地域高齢者が参加する講座や調査研究にも参加しています。
卒業した学校
日本女子大学 家政学部 食物学科 管理栄養士専攻 卒業
岐阜大学大学院 医科学研究科 修了(博士(医学)
好きな食べ物
アップルパイ













