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骨粗鬆症予防の食事(堀川 三由紀)

 高齢になると、ちょっとした転倒でも骨折につながることがあります。これは加齢とともに筋力が低下し、歩くときに足が上がらなくなって転倒しやすくなることに加え、骨がもろくなっていくためです。骨折による安静、運動量の低下はさらなる筋力低下を招き、寝たきりの原因ともなり得ます。

骨の約70%はカルシウムを主成分とする無機質(ミネラル)、約20%はコラーゲンを主成分とする有機物で成り立っています。丈夫な骨を作るにはカルシウム、コラーゲンの両方が必要となることがわかります。

骨粗鬆症予防に必要な栄養素

 では、食事でどれくらい量をどのように摂取していけばよいかについて考えていきましょう。

一日あたりのカルシウム摂取量は男性で750mg、女性で650mgといわれています。しかしながら、調査の結果によると、男女ともに摂取量が不足していることがわかります。また、男性は70歳以降、女性は閉経を機に骨量が急激に減少すると言われています。

カルシウムの吸収率も年代により異なり、高齢になるにつれ、低くなるといわれています(図1)。そのため年齢を重ねても、カルシウム摂取量を維持していくことは重要です。カルシウムを多く含む食品としては乳製品、小魚、海藻、大豆製品、青菜等があげられます。また、カルシウムは食品により吸収率が異なり、牛乳約40%、小魚約33%、野菜類で約19%と言われてます。

図1 年代別カルシウム吸収率

カルシウムの吸収を高め、骨を守ってくれる栄養素にはタンパク質、ビタミンD、ビタミンKなどがあります。

〇タンパク質は、人体の構成成分で水分約60%に次いで多く15~20%を占めています。骨の中では、コラーゲンの構成成分として存在し、骨の約20%を占めています。タンパク質を含む食品は肉や魚、卵、乳製品等の動物性食品の他に大豆製品があげられます。タンパク質の必要量は18歳以上の男性で65g、女性で50g以上です。

〇ビタミンDはカルシウムの小腸での吸収率を高め、カルシウムを骨にしっかり沈着させる働きがあります。ビタミンDは紫外線を浴びることで、皮膚でも合成することが出来ます。ビタミンDを多く含む食品には鮭、干し椎茸、鰻、木耳、青魚等があります。

〇ビタミンKはカルシウムが骨に吸着するときに必要となる、オステオカルシンの合成に関わっています。ビタミンKを多く含む食品には納豆、ワカメ、ブロッコリー、ほうれん草などがあげられます。

〇その他の栄養素として骨の中に入るカルシウムの調整役としてはたらくマグネシウム(玄米等の雑穀、海藻、大豆製品等に多く含まれる)、体内のカルシウムが排泄されるのを抑制するカリウム(バナナ・アボガト等の果物類、青菜、イモ類などに多く含まれる)があります。

図2 骨を守ってくれる栄養素

これらの食事を手軽に簡単に取り入れる一例として、いつものグラタン・シチューに鮭とブロッコリーを加えてみる、きんぴらやお浸しにごまで風味をつける、コーヒーにはフレッシュではなく牛乳を加える、卵焼きにのりやニラを入れる、ふりかけにしらすやひじきを利用する等の一工夫をしてみてください。

また、カルシウム吸収を阻害する物にも注意が必要です。清涼飲料水やレトルト食品・加工食品等に添加物として使用されているリンは、小腸でのカルシウム吸収を阻害します。ナトリウム(塩)はカルシウムの尿への流出を促し、過剰に体外へ排出してしまいます。過度のアルコール摂取は腸の粘膜を荒し、カルシウム吸収を低下させ、また、利尿作用によりカルシウムの尿からの排出量も増加してしまいます。

最後に

 食事は毎日の積み重ね。「毎日少しずつの不足(負債)」が積み重なってしまえばいつのまにか、骨粗鬆症・低栄養を招いてしまいます。骨の健康を保ち、健康長寿を目指すための基本として主食・主菜・副菜をバランス良く摂取し、図2のような栄養素を食生活に上手に取り入れていきましょう。
この記事が、皆様の健康な生活に役立つことが出来れば幸いに思います。

岡山旭東病院 診療技術部
栄養課 管理栄養士
堀川 三由紀

患者様とどのように接しているか

患者さんの、食の楽しみを活かせる管理栄養士であれたら

卒業した学校

ノートルダム清心女子大学

好きな食べ物

ありすぎて、選べません