ふだんの食事でフレイル対策(本川 佳子)
フレイル予防のための栄養とは?
フレイル予防のための食事に関する研究は、これまでたんぱく質摂取量が関連することが多くの研究で報告されています。高齢期では、筋肉量の減少や機能低下が起こりますが、その一要因として加齢による同化抵抗性(anabolic resistance)が起こることが挙げられます1)。
つまり高齢期の食事ではたんぱく質摂取量を不足させないよう、十分に摂取することが重要です。高たんぱく質食のフレイルへの効果は多数の研究によって示されています。日本人の食事摂取基準2020年版では、高齢期におけるフレイル対策といった側面から高齢期のたんぱく質の目標量について下限値の引き上げにつながりました2)。
また最近では、たんぱく質、肉などの単一の食品・栄養素の摂取ではなく、様々な食品を摂取する食品摂取多様性の重要性も指摘されています。私たちの研究においても、魚介類、肉類、卵、牛乳、大豆・大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、いも類、果物類、油脂類の10食品の摂取状況について聞き取る食品摂取の多様性3)(図1)をそれぞれ「毎日食べる」を1点、それ以外を0点とした10点満点のスコアの合計がフレイルのグループは3.9点、プレフレイルのグループは4.3点、健康のグループは4.5点とフレイルのグループで最も低値を示し、フレイル重症度と食品摂取多様性の間に有意な関連が認められました4)。
この10項目の食品摂取の多様性スコアの点数が高いことで、様々な栄養素の摂取につながり、筋たんぱく合成への関与、代謝・生理作用の維持に関与することで筋量や身体機能の低下が抑制された可能性が考えられます。食品摂取の多様性スコアは10食品の摂取向上を目指すもので、簡単で理解しやすい指標です。
フレイル対策のための食生活
これらの研究からフレイル・サルコペニア予防のための食生活には、十分なたんぱく質摂取とともに様々な食品をバランスよく摂取することが重要です。食欲の低下などによって、1食の摂取量が少なく3食合計しても必要な栄養を摂取できない場合、おやつ(間食)で補うと無理なく摂取量をあげやすくなります。特に間食では、通常の食事で不足しがちな牛乳や乳製品、果物などを取り入れると食品摂取の多様性やたんぱく質摂取量を向上させることができます。
また最近では、スーパーやコンビニエンスストアでレトルトパウチなどに入った保存性の高い惣菜等が種類も豊富で簡単に手に入るようになっており、これらを買い置きしておくことで主食・主菜・副菜を揃えた食事につながり、食品摂取の多様性を向上させることができます。
最後に
高齢期ではたんぱく質の豊富な肉類などの摂取量が減少しやすく、また孤食などによって食事内容が偏りやすくなります。ふだんのお食事で食品摂取の多様性を意識し、少しの工夫でいつまでもおいしく楽しい食生活を送りましょう。
参考文献
1)Prashanth HH et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2012, 3, 157–162.
2)厚生労働省,日本人の食事摂取基準
3)熊谷修,他,日本公衆衛生雑誌, 2003, 12, 1117-1124.
4)Motokawa K et al.,J Nutr Health Aging. 2018, 22, 451-456.
筆者
患者様とどのように接しているか
わかりやすい言葉かけと転倒予防など安心・安全
卒業した学校
関東学院大学、東京農業大学大学院
好きな食べ物
魚、鶏肉、たまご