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住み慣れたご自宅で暮らしていくことを支える食事とは?(前場 由梨) 

 近年の高齢化に伴い、60%以上の国民が人生の終末期に自宅で療養したいと希望していることが厚生労働省の調査により明らかになっています。元気な状態でも要介護状態になっても慣れ親しんだ地域や自宅で生活したいと希望する方が多くいらっしゃることが分かります。

一方で、在宅で暮らす高齢の方は栄養障害や摂食嚥下障害(飲み込む力の低下)などで栄養の予備能力が低下し、低栄養状態に陥るリスクが高く、在宅生活の妨げとなっていることが問題となっています。低栄養状態になることで免疫力の低下や持病の悪化などにもつながり、住み慣れたご自宅で長く生活することができなくなってしまいます。良好な栄養状態の維持が在宅で暮らしていくためには必要となります。また、食事は人生の楽しみの一つであり、その楽しみを人生の最後まで保つことも生きる上では重要なことと言えます。

お宅を訪問した際によく皆様から聞かれるのが、「動いていないから、お腹空かない…」「もう歳だからそんなに食べなくてもね」という言葉です。
《年齢を重ねるごとに食べる量が減ってくるからしょうがない》《もう高齢だから》と食事量が減っていることをそのままにしてしまっていることが多く見受けられます。そんな方々の中には食事量が足りておらず、実は栄養不足となっていることがあります。歳だからと安心せずに、以下のチェック項目でご自身の栄養状態を確認しましょう。低栄養を早期に発見するためには、BMI(体格指数)や体重変化、血液検査などで、こまめに身体の状態を確認する習慣をつけることが大切です。

【低栄養チェック項目】

いずれかの項目に該当している場合は、低栄養のリスクがあります。食事内容を振り返ってみましょう。
食事量を増やせば低栄養状態を改善する近道ですが、食欲低下がある方にとっては容易なことではありません。そんなときに有効な食事の工夫についてお伝えさせていただきます。

“ちょい足し”で栄養UP

≪脂質を足してカロリーUP≫
脂質は効率のよいエネルギー補給源となります。上手に活用しましょう。

〇バターやオリーブオイル、ごま油などを風味つけに利用しましょう
例)オムレツや炒めものなど、お粥にごま油をプラス

〇油を使う調理方法を上手く取り入れましょう
例)揚げ物などやムニエルなど
※揚げ物などがしつこくて嫌な場合はおろし煮などにすることでさっぱり食べることができます

〇サラダには、「ノンオイル」商品ではなくて油が入っているドレッシングやマヨネーズを利用しましょう
※マヨネーズは、肉につけて焼いたり、卵に加えて焼いたりすることでやわらかく仕上げることもでき、さらにカロリーUPにもなります

≪主食を充実させてカロリー・タンパク質UP≫
ご飯にタンパク質が豊富な食品である(肉・魚・卵・大豆製品など)を入れて混ぜご飯にしましょう!品数を増やさずにカロリー・タンパク質をUPすることができます。
例)卵粥 鶏五目御飯 肉そぼろご飯 しらすご飯 鮭フレーク 炒飯 きなこおはぎなど

≪間食を上手に活用してカロリーUP≫
1日3食の食事にこだわらずに、間食も利用してカロリーUPしましょう。

食事以外の時間で食べられそうなときに果物、乳製品、菓子類などを取り入れ栄養確保に努めましょう。ドラックストアの介護食コーナーにある高栄養食品を利用するのも良いでしょう。

最後に

 在宅で生活していくためにお困りのことがあれば、ぜひ在宅医療チームまでご相談ください。在宅医療では、住み慣れた自宅で治療・療養を受けることができます。医師(通院が難しい患者様を計画的に診療する訪問診療)、看護師(看護師が訪問してケアやサポートする訪問看護)、管理栄養士(訪問栄養指導)、薬剤師(訪問薬剤管理)、リハビリ職種(在宅リハビリテーション)、歯科医師・歯科衛生士(訪問歯科診療)などの医療職はじめ、ケアマネジャーやホームヘルパーなどの多職種が在宅での生活を支えてくれます。その中で管理栄養士は、ご家庭を訪問し皆様の“食事の困った”を一つでも多く解決するためのお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。

筆者

医療社団法人広栄会
厚木循環器・内科クリニック
外来・訪問診療部
(あつじゅん在宅)
管理栄養士 前場 由梨

患者様とどのように接しているか

患者様やご家族様の声に耳を傾け、自宅で望む生活ができるようにサポートしていくことを心がけています

卒業した学校

城西大学大学院薬学研究科医療栄養学専攻

好きな食べ物

餃子