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サルコペニア・フレイルと糖尿病(水谷 利紗)

サルコペニアとフレイル

 年齢を重ねるにつれて、心や身体に変化を感じる方が多いと思います。たとえば、「体力が落ちたな」 「食が細くなったな」、「やる気が起きないな」と感じることはありませんか?
フレイルとは、「加齢により、心身の活力の低下した状態」のことで、身体的な変化だけでなく、心や社会性の低下などの変化もみられます。健康と要介護の中間の段階で、適切な支援により健康な状態に戻り得ることができます。

サルコペニアとは、「加齢や疾患などにより筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態」のことで、フレイルの原因にもなります。サルコペニアは高齢者の約10%以上にみられます。(若い方でも、運動をしない、食事制限中心の極端なダイエットを行うと、サルコペニアになる可能性があります)

糖尿病とサルコペニアの関係

 糖尿病患者では、サルコペニアに約1.5倍なりやすく、進行も早くなると言われています。これは、インスリン(血糖を下げるホルモン)作用の不足や神経障害などにより筋肉量や筋力が減少しやすいからです。
反対に、サルコペニアの方は糖尿病になりやすくなります。サルコペニアによる筋肉量の減少は、インスリン(血糖を下げるホルモン)の効果や活動量が減少するため、糖尿病のリスクが高くなります。

栄養のポイント

適正なエネルギー量を摂る

1日に必要なエネルギー量の目安は標準体重×30~35kcalで算出します。

標準体重の計算方法 身長(m)×身長(m)×22
【例】身長150㎝の場合
標準体重 1.5×1.5×22=49.5㎏
1日に必要なエネルギー量 49.5×30~35=1,485~1,733 kcal
計算するのが大変な方は下の表1を目安にしてください。

表1 身体活動レベル別に見た必要エネルギー量

たんぱく質を積極的に摂る

たんぱく質は、筋肉だけでなく血液や骨など身体のあらゆる組織の原料であり、欠かせない栄養素です。また、たんぱく質はインスリン(血糖を下げるホルモン)の分泌を促進させる働きがあり、糖尿病にも良い影響があります。ご飯などの炭水化物よりも前に食べると良いです。たんぱく質は、主に肉、魚、卵、大豆製品、乳製品に含まれています。

たんぱく質の多い食材の一例

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、フレイルおよびサルコペニアを予防するために、65歳以上ではたんぱく質を、体重1㎏当たり 1日1g以上 【例】60歳の場合 1日60gが望ましいとされています。
両手に乗るくらいが1日のおおよその必要な量と言われています。

たんぱく質のもととなるアミノ酸を摂ることも大切です。特に分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、筋肉中のたんぱく質の合成の促進や分解の抑制、運動による疲労を軽減する働きがあります。しかし、BCAAは必須アミノ酸の一種であり、体内でつくることができず食事から摂取する必要があります。

BCAAは肉、魚、卵、乳製品など主に動物性たんぱく質に多く含まれています。運動の前後に間食としてヨーグルトやチーズ1個または牛乳コップ1杯を摂るのもおすすめです。ただし、腎臓疾患がある方は主治医や管理栄養士に相談して量を決めましょう。

食事のポイント

◆1日3食を心がける

食事を抜いてしまうと1日の必要な栄養が不足します。また、間食が増えてしまう原因にもなります。

バランスよく食べる

丼、麺、パンなどの単品メニューよりも、おかずを付けることを意識しましょう。もし単品メニューになってしまう場合は、具材をたくさん入れるようにしましょう。これは血糖の上昇を緩やかにする方法のひとつでもあります。

ひとりで食べるよりも誰かと一緒に

家族や友人と一緒に食事をすると、“楽しく食べる”ことができ、食欲も増進にも繋がります。またひとりでの食事だと簡単なもので済ませがちですが、人と食べることで品数が増えて、様々な栄養を摂ることに繋がります。

運動のポイント

レジスタンス運動で筋力の低下を予防しましょう。レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかけて筋力を向上させるための運動です。
レジスタンス運動は糖尿病にも効果的です。筋肉が増えることで基礎代謝量が上がり、体内の糖の利用が促進されて血糖が下がりやすくなります。また継続していくことで、インスリン(血糖を下げるホルモン)が効きやすくなります。

〇足踏み運動(目標20回)

背筋を伸ばし立ちます。太ももを高く上げ、腕を前後に大きく振りましょう。立って行うことが難しい方は、椅子に座って行いましょう。

〇つま先立ち(目標20回)

壁や椅子の背など安定する場所を両手で掴みます。両足のかかとをまっすぐ上げて、下げる動作をゆっくり繰り返しましょう。

〇椅子スクワット(目標20回)

椅子に座り、足を肩幅に開きます。両手を組み、背筋をまっすぐに立ち上がり、椅子に座る感覚で膝が90度になるくらいまで腰を下ろしましょう。

【注意】

  • 運動習慣のない方は少しずつ行い、徐々に体を慣らしていきましょう
  • 家族のもとで行ったり、手すりや机など掴まれるものを用い、安全に配慮して行いましょう
  • 持病がある方は、運動の制限がないか主治医に確認してから行いましょう
医療法人大河内会
おおこうち内科クリニック
管理栄養士 水谷利紗

患者様とどのように接しているか

患者様の気持ちに寄り添って、一緒にできることを考えるようにしています。

卒業した学校

金城学院大学

好きな食べ物

オムライス、いちご、桃