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夏の疲れを改善し、低栄養予防を!(大沢 愛)

 夏もだいぶ過ぎましたが、まだまだ暑い夏は続きそうですね。

「なんとなく調子が悪い」「食欲がない」「身体がだるい」などといった症状は見られてはいませんか。こういった症状が見られた方は夏の疲れが溜まっているサインかもしれません。

夏場は冷たくさっぱりした麺類や野菜類などが好まれますが、栄養に偏りがあると、知らず知らずのうちに、たんぱく質や脂質が不足し、低栄養となってしまう可能性があります。また、夏の暑さで食欲も低下しやすく、特に元々食が細い方や高齢の方では、食事の量自体も減少し、体重減少に繋がる可能性もあります。体重減少は、低栄養のリスクが高まる原因にもなります。

そこで今回は、夏場の暑さを乗り切り、低栄養を予防、または改善する食事のポイントについてお話したいと思います。

まず「夏の疲れ」とは、どういった症状を指すのでしょうか。

医学的に夏の疲れという病態はなく、夏場の高温多湿な環境に体が順応しきれず自律神経が乱れ、慢性的な不調をきたすことが夏の疲れであると考えられます。

夏場は室外と室内の温度差が大きいことで、常に体温調整をしている状態であり、自律神経が乱れやすくなります。「なんとなく調子が悪い」「食欲がない」「身体がだるい」といった症状が起こりやすいのです。夏場は1年のうちでも特に体調が乱れやすい時期と言えます。

そこで、夏の疲れを改善するためには、下記3点を心がけましょう。

①バランスの良い食事を心掛ける

 バランスの良い食事とは、5大栄養素と言われる、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルを揃えた食事を指します。

・炭水化物:身体のエネルギー源になる栄養素

・たんぱく質:身体を作るもとになる栄養素

・脂質:身体のエネルギー源になり、かつホルモンや細胞膜、核膜などの構成や、皮下脂肪として臓器を保護する栄養素

・ビタミン・ミネラル:身体の調子を整える栄養素

栄養素ベースで考えると少し難しいですが、毎食、主食(ご飯・パン・麺など)、主菜(肉・魚・卵・大豆製品など)、副菜(野菜・海藻・きのこ・こんにゃくなど)を揃え、加えて1日1~2回乳製品と果物を摂取するとバランスの取れた食事となります。(図1)

また牛乳は乳製品の中でもカルシウム等のミネラル含有量が多いことに加え、エネルギーも高く、たんぱく質含有量も多いため、食欲の低下が見られる場合には、エネルギーとたんぱく質補給目的に用いても良いでしょう。

図1 五大栄養素

②脱水を予防する

 夏場は汗を大量にかくため、水分と共にナトリウム(塩分)、ビタミン、ミネラルも失われやすいです。

脱水になると、体を循環する血液量も減少するため、必要な栄養素が体内に行き渡りにくく、臓器の機能低下に繋がったり、食欲の低下、全身の倦怠感の原因にもなります。脱水になると食欲も低下しやすく、結果として低栄養にも繋がってしまいます。

脱水予防にはこまめな水分補給が推奨されますが、特に大量に汗をかいた際は、水ではなく、ビタミンやミネラルも含まれる経口補水液の摂取がおすすめです。経口補水液は、汗と共に流れ出やすいナトリウムやカリウムを補給できる製品になりますが、腎機能の低下が見られる方などは、摂取を控えた方が良い場合もあるので、医師や管理栄養士に相談してみましょう。

また、ご高齢の方は口渇感を感じにくいため、こまめな水分摂取を心掛ける必要があります。お手洗い後など、水分を摂取するタイミングを決め、忘れずに補給しましょう。ご高齢の方と同居されているご家族の方は、こまめな水分補給が出来ているか確認すると良さそうです。

③ビタミンB1・ビタミンCの多い食品を取り入れる

 ビタミンB1は、糖質を体内でエネルギーに変換するために不可欠な栄養素であり、疲労回復効果、夏の疲れ改善にも有効な栄養素です。ビタミンB1は肉類や魚類、豆類、未精製穀類(玄米など)、種実類に多く含まれます。無理なくビタミンB1を摂取するために、主食を玄米へ変更することも良いかもしれません。
 ビタミンCは疲労を起こす原因の一つとされる活性酵素を抑える抗酸化作用、ストレスの緩和に有用な栄養素です。ビタミンCは野菜類、果物類に多く含まれます。特にパプリカやブロッコリー、ピーマンやキウイフルーツ、バナナに多く含まれるので、上記の食品を少し多めに摂取すると、夏の疲れ改善に効果的かもしれません。

筆者

聖マリアンナ医科大学病院 
栄養部 管理栄養士 大沢 愛

患者様とどのように接しているか

患者さんの立場に立って考える

卒業した学校

仙台白百合女子大学

好きな食べ物

コロッケ