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人生100年時代への心得 —「フレイル予防」の食事—(佐藤 ひろ子)

現在、日本の高齢化率は約29.3%。2070年には4人に1人が75歳以上になると推計されています。そんな中、今私たちが向き合うべき大きな課題が「フレイル予防」です。要介護の一歩手前と言われるフレイルですが、実は地域で暮らす日本の高齢者の約半数がフレイルまたはその予備軍であるという結果が出ています。(東京都健康長寿医療センター「日本人高齢者全体のフレイル割合」報告(2020年・2025年など))。今一度、低栄養予防やフレイル予防を考えて、皆で考えてみましょう。

■ 体重減少は「赤信号」? 高齢期の新常識

中年期までは「メタボ予防」のために食べ過ぎを控えてきた方も多いでしょう。しかし、高齢期に入ったらその常識を「フレイル予防」へと切り替える必要があります。

フレイルの診断項目の一つに「6か月で、2kg以上の意図しない体重減少」とあります。1日10gの減少は気づきませんし、感じられないうちに進んでいるのです。この意図しない、些細な変化を知る必要があるのです。そのため、日々体重計に乗って自分の体重や身体の状況を把握することがとても重要ですね。

高齢になると、食欲や咀嚼力の低下から「低栄養」に陥りやすくなります。すると、体重と共に筋肉や骨が衰え、動くのが億劫になり、さらに食欲が落ちるという「フレイルの負のスパイラル」に巻き込まれます。 「最近、体重が減ってきたな」と感じたら、それは体からのサインかもしれません。

■ エネルギー不足にならない事と筋肉を貯める「貯筋」の食事術

筋肉を減らさないために、今日から意識したいポイントは3つです。

しっかり食べて「エネルギー」を確保 ご飯やパンなどの主食を減らさないこと。エネルギー不足になると、体はせっかく維持している筋肉からエネルギーを作ろうとしてしまいます。フレイル予防というと、たんぱく質も大事ですが、まずはエネルギー不足ならないように朝、昼、夕食を欠食せずにすることがとても大切です。高齢になると夫婦で1つのお弁当で良いかと続けていると、みるみる体重が減ってきて、さらに転びやすくなったり、認知症が進行した例もあります。食べられる量とエネルギーや栄養素の密度を考えた、少量で、エネルギーやたんぱく質を濃密にする必要がありますね。

主食と同時にたんぱく質で「材料」を補給 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食取り入れましょう。1食あたりたんぱく質20g程度を3食均等に摂り、ロイシン(必須アミノ酸)は筋肉の合成を促すスイッチ(mTOR)を活性させる作用があります。そのため、肉・魚・大豆・乳製品など多様な食品を意識して摂るのが大切です。コツコツと「貯筋」することが、将来の動ける体を作ります。

また、食品の「多様性」に気を付けて食べることも重要です。栄養を活かす 特定の食材に偏らず、様々な食品を組み合わせることで、体の中の代謝に関わり、さまざまな栄養の吸収効率が高まります。

■ 「食べて、動く」が元気のサイクル

もちろん、食べるだけでは筋肉は増えません。逆に運動や筋トレしているだけでも筋肉は増えませんし、維持もできません。散歩やウォーキングなど、無理のない運動とセットにすることで、初めて食べた栄養が「筋肉」へと変わります。

■ 終わりに:世代を問わず伝えたいこと

「食べることは生きること–Well Being–」という言葉。 これは高齢の方だけでなく、若い世代にとっても共通の大切なメッセージです。我々動物は長い歴史の中で、身体活動と食事を繰り返しながら、切っても切れない関係を築き上げました。ほどよい運動や日々の労働などの身体活動と食事をとることは、体の代謝を上手く回すだけでなく、からだ全体で心地よさや快適なWell Beingを感じられ、日々の生活に活力を与えるでしょう。身体は食事でできています。「慣れ」てしまっている日々の食事を少しだけ見直し、QOL(生活の質)を高めていく。その一歩が、自分らしい人生を長く楽しむための秘訣ですね。

筆者

東京聖栄大学 健康栄養学部
公衆栄養学研究室 准教授
管理栄養士 佐藤 ひろ子

患者さまとどのように接しているか

公衆栄養活動では地域の高齢者の方に、健康栄養講座を日々大学から発信しています。人生の先輩でもありますので、食生活の工夫を日々聞いております。

卒業した学校

大妻女子大学大学院 人間文化研究科 修士(生活科学)修了
国立公衆衛生院 専攻課程保健コース修了
大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻 家政学士卒業

好きな食べ物

豚肉のカレーライス