低栄養を防ぐことが、元気に過ごすための第一歩(入部 瑠夏)
― 食べることから、人とつながり、暮らしを整える ―
毎週木曜日の午後、佐賀県小城市にあるひらまつ在宅クリニック内の認定栄養ケア・ステーションでは、「おぎ暮らしの保健室・だいでんカフェ」を開いています。
このカフェは「だいでん(佐賀弁で「誰でも」の意)」のとおり、誰でもふらっと立ち寄ることができる場所です。集った人々が、お茶や手作りおやつを囲みながら、同じ時間・同じ空間を共にし、自然と会話が生まれてきます。

散歩していたら看板を見かけたので立ち寄られた方。
配偶者を看取り、ひとり暮らしになられた方。
介護認定の相談をきっかけに、地域包括支援センターより紹介された方。
ケアマネジャーさんから勧められて介護の気分転換に来られた方。
理由はさまざまですが、共通して聞かれるのは
「最近、食事の回数が減ってきた」
「一人だと、あまり食べなくなった」
といった声です。
参加者の中には、次のように話してくださった方もいます。
「気づけば、1週間ほとんど誰とも話さない日が続いていました。
このまま一人で過ごしていて、いざという時が不安になってきて……」
私はこれまで20年間、病院の管理栄養士として治療のための食事に関わってきました。
現在は、認定栄養ケア・ステーションの活動を通して、さまざまな病気を抱えながらも地域で暮らす方々の“日常の食”に寄り添っています。
その中で強く感じるのは、低栄養やフレイルは、特別な人だけの問題ではなく、誰もの暮らしの延長線上にあるということです。高齢になると、食事量の減少やたんぱく質不足に加え、外出や会話の機会も減りがちになります。その結果、気づかないうちに筋肉量が減少し、疲れやすくなることがあります。これが、フレイルやサルコペニアの入り口です。
ここからは、今日から意識できる食のヒントをいくつかご紹介します。
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ヒント①「主食・主菜・副菜」をそろえる意識を
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主食・主菜・副菜がそろった食事は、フレイル予防と関連しています。
完璧でなくて構いません。
「ごはん+たんぱく質のおかず+何か一品」を目安にしましょう。
※一品は、その日の食事に応じて
・たんぱく質(ヨーグルト・納豆・卵など)
・野菜や海藻(サラダ・ひじき・もずくなど)
足りないものを“ちょっと足す”イメージでOKです。
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ヒント② たんぱく質は「1日まとめて」ではなく「毎食」
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筋肉を保つためには、たんぱく質を1日3回に分けて摂ることが大切です。
1回の目安
・卵なら 1個
・豆腐なら 半丁(150g)
・魚や肉なら 手のひら1枚分
「1日でまとめて」ではなく、特に運動やリハビリしたあとなど、毎食少しずつを意識することがポイントです。
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ヒント③ 食べきれない時は栄養の“濃さ”を上げる
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多くの量を食べられないときは、「ひとさじ足す」だけでも、少量でエネルギーとたんぱく質を補える工夫が有効です。
例えば
・味噌汁に 卵1個 または 豆腐1/4丁
・おかずに チーズ1枚
・ごはんに しらす大さじ2+ごま少し
飲み物の工夫
・お茶 → 牛乳や豆乳コップ1杯(200ml)
さらに
・料理に 油 小さじ1 追加
食べる量はそのままで、栄養だけを増やすことができます。
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ヒント④ 誰かと食べる機会をつくる
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孤食は低栄養や気力低下と関連することが分かっています。
一人での食事が続くと、食欲や気力が落ちやすくなります。
週に1回でも
・家族と
・友人と
・地域の集まりで
「誰かと食べる時間」を持つことが、フレイル予防につながります。
だいでんカフェでは、同じものを口にし、「おいしいね」と言い合い、そこから思い出話が自然と広がっていきます。
カフェに初めて来られた方は、はじめは少し緊張や不安を感じた表情をされていますが、お帰りになる頃にはやその表情もやわらぎ、少し前向きな気持ちで帰路につかれる姿を、これまで何度も拝見してきました。

(健康運動指導士とちょこっと運動)
だいでんカフェの「ワンポイント講座」は、毎回30分~1時間ほど行われ、医療・介護職の方や地域で文化・芸術・教育に関わる活動をされている方々が、ボランティアで講師として来てくださいます。

土砂降りの雨の日も、凍えるように寒い日も、灼けつくように暑い日も、「家に一人で過ごすより、ここに来て皆の顔が見たい」と、工夫してでも出かけようとするその気持ちは、とても大切なものですね。
食べることは、単に生命を維持するためだけの行為にとどまりません。
人とつながり、自分自身を整え、生きる力を取り戻すための大切な営みです。
低栄養やフレイルは、早期に気づき、少しの工夫を取り入れることで予防することができます。このページが、健康的でいきいきとした毎日への一歩につながれば幸いです。
参考:公益社団法人日本栄養士会 全国の栄養ケア・ステーションを検索
https://www.dietitian.or.jp/carestation/search/
筆者

ひらまつ在宅クリニック
管理栄養士 入部 瑠夏
患者様とどのように接しているか
その人らしさを大切に、暮らしや想いを伺いながら一緒に考え、無理なく“食べる”ことを続けられる目標を見つけています。
卒業した学校
永原学園 西九州大学
好きな食べ物
旬の食べ物(魚、野菜、果物)













