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健康寿命を延ばすのはフレイル予防が大切!(久永 文)

フレイルとは

 厚生労働省は2019年に食べて元気にフレイル予防と題してパンフレットを作成しました。
フレイル(虚弱:Frailty)とは、厚生労働省研究班の報告書で「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態である。一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像1)とされており、健康な状態と日常生活でサポートが必要な状態の中間を意味します。」難しい内容ですね。

簡単にいうと歳をとって体や心の働き、社会的つながりが弱くなった状態を指します。そのまま放置すると、要介護状態になる可能性があります。大事なことは、早めに気づいて適切な取り組みを行うこと。そうすればフレイルの進行を防ぎ健康に戻ることができます2) 
当院でもフレイル予防の重要性を考慮し、2020年1月よりフレイル未来ケアステーションを開設しフレイル予防を目的に外来・入院を多職種協働で行っています。その中で管理栄養士・サルコペニア・フレイル指導士として、骨格筋量の減少や低栄養状態の改善目的に介入させいただいています。

亜鉛について

 今回フレイル予防をする中で気になっている亜鉛のお話をさせていただきます。なぜ亜鉛なのかと申しますと当院フレイル外来を受診し血液検査結果で亜鉛の数値が基準値以下の方の割合が約85%を占めていました。

亜鉛は体内で作ることができない「必須微量ミネラル」で食事から摂取する必要があります。 亜鉛の1日摂取基準は厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020」より推奨量:男性18歳以上11mg/日、女性12歳以上8mg/日とされています。厚生労働省2019年度 国民健康・栄養調査結果より1日当たりの摂取量は、全体平均で8.4mg、男性9.2mg、女性7.7mgとなっていました。食事からの亜鉛摂取も不足していることがわかりました。

①亜鉛の働き

味覚を正常に保つ、骨の成長、腎臓、インスリンを作る膵臓、抗酸化作用、免疫の向上、皮膚、髪の毛などさまざまです。

②不足するとどんな症状が現れるのでしょうか。

味覚障害、貧血、食欲不振、皮膚炎、生殖機能の低下、慢性下痢、脱毛、免疫低下、低アルブミン血症、神経感覚障害、骨粗鬆症、認知機能障害などが現れます。

③ どんな食品に多く含まれているのでしょうか?(食品成分表八訂100gあたりを表示)

図1 亜鉛を多く含む食品

④吸収率を上げる方法はないのでしょうか

亜鉛の吸収を高める栄養素はたんぱく質、クエン酸、ビタミンCなどがあります。柑橘類(レモン・すだち・カボス・みかんなど)にはクエン酸、野菜にはビタミンCが含まれるため一緒に摂取しましょう。

⑤簡単に亜鉛を摂るメニュー

・牛肉・しいたけ・人参・カシューナッツ炒め 

point:食べるときにレモンをプラス

・具だくさん豚汁 

point:お出しの鰹節や煮干しも一緒に食べちゃいましょう

⑥亜鉛の吸収阻害の原因

最近は加工食品に含まれる保存料が亜鉛の吸収を阻害することが分かってきました。加工食品を食べる量が増えないようにしましょう。またアルコールの多飲により亜鉛の排出量も増加します。日頃からバランスの良い食事を心がけましょう。

⑦身体に必要な亜鉛をたくさん摂っても大丈夫でしょうか?

通常の食生活をしている場合は亜鉛の過剰摂取になることはあまりありません。サプリメントや亜鉛強化食品の誤った過剰摂取や長期間摂取することで鉄や銅の吸収阻害をして貧血、免疫低下、下痢、神経系の異常、HDLコレステロール値の減少などを起こす場合があります。

最後に

亜鉛のお話は、いかがでしたか。食べて元気にフレイル予防大切ですね。気温の変化が著しい季節ですが体調に気をつけてフレイル予防をしましょう。

1)厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業) 総括研究報告書 後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究 研究代表者 鈴木隆雄

2)厚生労働省 令和元年度食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防事業

筆者

神戸労災病院
栄養管理室 室長
管理栄養士 久永 文

患者様とどのように接しているか

リラックスして安心してお話していただけるように心がけています。

卒業した学校

神戸女子短期大学

好きな食べ物

魚、パン