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透析患者の低栄養予防「上手に食べてサルコペニア予防」(平井 梢)

(1) 3食きちんと食べる

 透析患者さんとお話をしていると、「透析日の食事のタイミングがずれてしまい昼食が遅くなるから夕食が食べられない」「夕食が入らなくなるから昼食は食べなかったり軽食にしているよ」「体重が増えていたから朝ご飯は食べて来なかった」というような声をよく耳にします。このような状態が続けば必要な栄養が摂れずにサルコペニアやフレイルになってしまう可能性がありますので、食事時間を調整したり間食を取り入れることで1日に必要な栄養が摂れるようアドバイスを行っています。

(2) 栄養補助食品や便利食材の活用

 食事が入らない患者さんには栄養補助食品の紹介も行っています。「栄養補助食品は美味しくない」と悪いイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、現在販売されているものは種類も豊富で味も美味しくなっています。栄養補助食品を紹介した患者さんから「口に合わない・お腹がゆるくなる」「金銭的に続けるのが難しい」とのご意見を頂くことがあります。馴染みの味にちょっとプラスするだけでたんぱく質を強化したり、エネルギーUPにつながる工夫を提案しています。例えば、いつもの味噌汁に豆乳や大豆のすり潰しを大さじ1杯、卵を1個追加するだけでもエネルギーやたんぱく質を強化できます。
 また、患者さんの中には「交通手段がなくて買い物ができない」「料理するのが億劫」と言われる方もおられます。最近は下処理済みのカット野菜や冷凍野菜・缶詰食材が多く出回っています。料理がしやすく、保存にも便利な食材を上手に活用すれば毎日の食事作りも少し楽になるはずです。

実際にご紹介したメニューの1例です。

●呉汁(ごじる)

(栄養量)

(ワンポイントアドバイス)

●呉汁は熊本で昔からよく食べられている郷土料理です。呉(大豆をすり潰したもの)を味噌汁に入れるだけで良 質のたんぱく質を摂ることができ、エネルギーもアップします。呉汁の素が手に入らない場合は、豆乳や大豆の水煮をすり潰して代用できます。
●透析患者さんは汁物の摂取量が増えると体重増加に繋がります。
●味付けは変えずにお椀に注ぐ汁の量を半分(60~70㏄程度)にして食べるようにしましょう。
●野菜の下ごしらえが大変な場合は、「冷凍の豚汁の具」を使うと簡単に調理できます。

(3) まずは「食べられるもの」を優先する

 食べる量が特に減っている患者さん(普段の半分にも満たない状態が続いている場合)にはその方の嗜好に合わせた食事の提案も大事なポイントです。普段から食事管理を意識している患者さんやご家族は食べる量が極端に減った状態でも特定の食品を制限している場合があります。
 
 私が過去に経験した事例の中でご家族からこのような相談を受けたことがあります。「母がラーメンを食べたいと言いますが体重も増えるし塩分も摂り過ぎますよね、おかずも母が好むものを頑張って食べさせようとするのにほとんど食べません、どうしたら良いでしょうか?」私はこのご家族に「お母様は摂取量も少ないので、美味しい味付けで少量食べてもらってはいかがでしょうか?食事量が減っているため、まずはご本人の食べたいもので食欲UPに繋げていきましょう」とアドバイスしました。

 このような事例の場合、同じ味付けのラーメンを食べても口に入る塩分は少なくなります。食事摂取量が極端に減っている場合、まずは少しでも食べられるように工夫し、「こんなに食べることができるんだ」という自信をつけて食欲アップに繋げていきましょう。

さいごに

 栄養相談の中で色んな情報を発信しても実際に生活に取り入れて続けられなければ効果は出てきません。1つでも良いので「自分でやれそう」と思うことからコツコツ取り組んでみましょう。当法人のホームページにも低栄養に関する情報を掲載しています。レシピなども掲載しています。ぜひご覧になって下さい。
【仁誠会 食事について】
https://www.jinseikai.or.jp/archives/iryo_ct/%e9%a3%9f%e4%ba%8b%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6

患者様とどのように接しているか

その方の生活スタイルにあった食事管理が提案できるように普段からコミュニケーションをしっかり取るように心がけています。

卒業した学校

中村学園大学 栄養科学部 栄養科学科

好きな食べ物

ハンバーグ・チョコレート