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孤食は低栄養のリスク?共食を増やして食事バランスを(児玉 小百合)

「しっかり栄養」が摂れるバランスの良い食事とは?

 いつまでもイキイキと健康で幸せな毎日を送りたいものです。食事から「しっかり栄養」を身体に取り入れて、健康長寿を達成しましょう。国は健康状態の改善の目標として、「バランスの良い食事を摂っている者の増加」を掲げています。「バランスの良い食事」とは、どのような食事でしょうか?ここでは「6つの基礎食品群」をご紹介します(図1)。

図1 6つの基礎食品群1)

食品の分類
【第1群】「魚、肉、卵、大豆・大豆食品」
 筋力維持に大切なたんぱく質を多く含む食品
【第2群】「牛乳、乳製品、骨ごと食べられる魚」
 骨粗鬆症予防などに重要なカルシウムの給源
【第3群】「緑黄色野菜」
 100g当たりに、ビタミンAの仲間に分類されるβカロテン当量が600μg以上含まれる野菜(トマトやピーマンなどは食事に取り入れる頻度や量を考慮して「緑黄色野菜」とされています)
【第4群】「その他の野菜、果物」
 主にビタミンCや食物繊維の給源
【第5群】「米、パン、めん、いも」
 糖質性のエネルギー源。いも類はビタミンCなども含む
【第6群】「油脂」
 脂肪性のエネルギー源

 「6つの基礎食品群」を食事に取り入れるコツは、「主食・主菜・副菜」を組み合わせることです。プラスして牛乳と果物を添えると、バランス良く「しっかり栄養」を摂ることができます。野菜は、具たくさんのお味噌汁などを副菜にするとたくさん摂ることができ、汁の量が少なくなるので塩分も控えられます。

高齢者の低栄養はさまざまな要因が関連しています

 バランスの良い食事を摂りたくても、食べられる量が若いころに比べて少なくなったな、と感じていらっしゃる方も多いと思います。これは老化に伴い、消化吸収機能が低下するなど生理的変化の影響があります。食事の量が減ると、栄養面ではエネルギーをじゅうぶん確保できなくなるため、体重が減少し低栄養の状態になることが心配されます。

 このような「身体的要因」に加え、高齢者の低栄養はさまざまな要因が影響していることが報告されています(図2)。近年はひとり暮らしの高齢者が増加しています。高齢者世帯のうちひとり暮らしは51.6%で、夫婦のみ世帯の44.1%よりも多くなっています3) 。暮らし方は高齢者のこころの健康や社会経済的な要因に影響し、食生活にも関連することが報告されています。

図2 高齢者の低栄養の要因2)

高齢者の孤食、食事状況、こころの健康

 お食事をひとりで摂る孤食は、1日の中でどのくらいありますか?おひとりで食事を摂ると、短時間で簡単に済ますため料理の品数が減り、栄養や食品の摂取が少なくなる傾向があるようです。国内の7つの市町村に住む約2,200人の高齢者を対象に、だれかと一緒に食べる共食が週1回以上の群、月に1回以上の群、月に1回未満の群(孤食が多い群)に分けて、食事状況を比較した研究があります4)。調査結果から、孤食が多い高齢者は主観的な健康度が低く、いろいろな食品を摂れていませんでした。特に肉類、緑黄色野菜、果物、油脂類を摂っていない割合が高いことがわかりました。
 また、私たちの研究では、全国25府県に住む高齢者を対象に、暮らし方別に孤食と6年後のこころの健康との関連を調べました5)。同居の男性は、6年後の居住形態にかかわらず孤食が継続すると幸福感が低くなりました。また同居の女性は、共食が6年後に孤食に変化すると、幸福感が低くなる関連が認められました。

共食を増やして、こころも元気に低栄養を予防しましょう

 地域ではボランティア団体が主催する食堂などもありますので、足を運んでみてはいかがでしょうか?皆で食事をして楽しく過ごし、こころも元気に食欲も増すことと思います。

 駒沢女子大学健康栄養学科で管理栄養士を目指す学生達が活動に協力する、地域ボランティア団体(であいの和)のサロンをご紹介します。

■みんなの居場所サロン
■場 所:ユニコムプラザさがみはら
■開催日時など案内チラシ: https://unicom-plaza.jp/news/15703

いつまでも健康でこころも元気に、幸せな健康寿命を延伸していきましょう!

参考文献
1) 厚生労働省「6つの基礎食品」より作成
2) 厚生労働省,e-ヘルスネット,高齢者の低栄予防. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-014
3) 厚生労働省,2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況,65歳以上の者のいる世帯の状況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa23/dl/10.pdf
4) Ishikawa M, Takemi Y, Yokoyama T, et al. “Eating Together” Is Associated with Food Behaviors and Demographic Factors of Older Japanese People Who Live Alone. J Nutr Health Aging. 2017;21(6):662-672.
5) 児玉小百合, 栗盛須雅子, 星 旦二, 地域在住高齢者における男女別にみた孤食と居住形態の継続・変化と6年後の幸福感との関連, 社会医学研究 40 (1), 19-30, 2023.

著者

 駒沢女子大学
人間健康学部健康栄養学科 教授 
管理栄養士 児玉 小百合

地域支援活動としてどのようなことを行っているか

 市民ボランティア団体の栄養管理役員として活動支援しています。

卒業した学校

 和洋女子大学大学院(学術博士)
 東京医科歯科大学大学院(医科学修士)

好きな食べ物
 お寿司,中華料理