mealtime

食事を楽しむ習慣を(宇野 千晴)

 フレイルとは、加齢にともなってさまざまな機能の低下が進み、それによって健康障害を起こしやすくなっている状態のことを言います。運動機能や認知機能が衰えると、介護の必要な状態に陥るリスクも高まります。心身が衰え、疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになることも少なくありません。フレイルを進行させないためには、栄養状態に気をつけることが重要です。また、適切な食事や運動によって、フレイルを進行させないだけでなく、状態を改善し、健康な状態を取り戻すこともできます。

「こしょく」という言葉を聞かれたことはありますか?

 「こ」に当てはめる漢字によって 意味はいろいろあります。現代における食卓を具体的に表したのが「孤食」「個食」「固食」「小食」「粉食」「濃食」――といった6つの『こ食』です。いずれも良くない食習慣と考えられています。

「こしょく」の中でも 特に問題視されているのが「弧食」です。共働きの家庭や高齢者のひとり暮らしが珍しくない今、1人で食べる「孤食」の機会が増え、誰かと食事を共にする機会が減っているといわれています。

農林水産省が実施した「一人で食べる頻度」についての調査では、「1日の全ての食事を一人で食べることがあるか」という質問に、「ほとんど毎日」と回答した人の割合は13.7%。性別・年齢別でみると、最も割合が高かったのは70歳以上の女性で27.6%でした(70歳以上の男性は15.1%)。

孤食が続くと、好きなものや準備に手間がかからないものばかり食べて栄養が偏ったり、周りの人の目がないために食事のマナーも悪くなってしまうことがあります。また、食事の楽しみが減っておいしさも感じられにくくなり、食事を抜く回数が多い、野菜や果物の摂取が少ない、低体重の方が多いなど、体にとって良くない結果も報告されています。さらに、孤食は、食べるために必要な噛む力など口腔機能の低下につながることも知られています。
このような健康にも悪影響をもたらす「孤食」を減らす対策として 求められているのが「共食」です。

共食とは?

 農林水産省が発表している食育推進基本計画では、「共食(きょうしょく)」とは、「みんなと一緒に食卓を囲んで共に食べること」と定義されています。近年では、同じ食卓を囲んでいなくても、オンラインなどで顔を見ながら一緒に食事をすることも「共食」と呼ばれています。
共食の機会が「月に何回かある」という人は、毎日共食をする人と比較して体重減少の危険性が1.07倍高く、「ほとんどない」という人では1.17倍高いことが分かっています。また、家族や友人など誰かと食事をする頻度が多い人ほど、多様な食品を組み合わせて食べていることも知られています。

最後に

 このような結果から、体や心の健康維持・増進には、「何を食べるか」だけでなく、「誰とどのように食べるか」も大切な要素だということが分かります。

誰かと一緒に食事をすることは、人と「つながる」ことにもなり、フレイルを予防するためには大切です。「おいしいね」と、家族や友人と一緒に食べる楽しみや喜びは、脳への刺激にもなるため、認知機能の維持にもつながるといわれています。このように、食を楽しむ習慣が健康的な毎日を送る秘訣かもしれません。

名古屋学芸大学
管理栄養学部老年栄養学研究室
管理栄養士 宇野千晴

患者様とどのように接しているか

身近な存在でありたいと思っています

卒業した学校

中京女子大学(現;至学館大学)健康科学部栄養科学科
名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科 博士前期課程・博士後期課程

好きな食べ物

八宝菜、うどん、アイスクリーム