最後まで口から食べるために!(島田 和美)
私は調剤薬局の認定栄養ケア・ステーションで勤務しており、来局される方や、地域の方に講演を行うなど、いろいろな方とお会いする機会があります。その中で感じることは「食べる」ことに興味がない方は少ないけれど、今まで栄養の相談をしたり、話を聞いたりしたことがないという方がとても多いということです。
メディアや広告など栄養の情報は山のように入るけれど、実際に何が必要で何を注意したらいいかわからないという方がほとんどです。年齢を重ねても何となくカロリーの高いもの、油ものは控えている、肉は身体に悪いなど自分の解釈で食事をし、気が付かない間に体重が減り、そして何かアクシデント(病気や骨折など)があって体重がさらに落ちてしまうとその後、体重は元には戻れないという方をよく見かけます。
栄養のギアチェンジを!
食事は乳幼児期、学童期、思春期、成人期、そして高齢期とそれぞれのライフステージに合わせて摂っていく必要があります。成人してからは生活習慣病予防、過栄養によるエネルギー、脂肪の制限が必要であり、65才くらいから状況や疾患等に合わせた個別対応の食事が必要となります。フレイル予防が重要となり、たんぱく質の摂取基準の下限値もエネルギーの13%から15%に引き上げられました。これは今までの食事に加えて卵1個と豆腐1/3丁分多くとるくらいの量となります。
簡単にちょい足しアップ
令和2年の統計で65才以上の一人暮らしの割合は、男性15%女性22.1%(昭和55年では男性4.3%女性11.2%)とかなり増えています。高齢者のみの世帯では食事を用意するということは大変な労力であり「食べる量が減ってきた」、「作るのが面倒くさい」という声をよく聞きます。
そこで無理なく簡単に「いつもの食事にちょい足し」をすることで、食事を大きく変えなくてもエネルギー、たんぱく質をUPさせることができます。1食に何かしらのたんぱく質を1品入れる、またMCTオイルやオリーブオイルなど小さじ1杯をおかずにかける、また炒め物に使うこと、たまにはマヨネーズ料理をとり入れることなどもエネルギーの確保になります。
食べるためには食べる力を日頃から維持することが必要!
低栄養にならないようしっかり食べるためには、まず噛めないといけません。そのため口腔機能の低下に注意することが大事になります。加齢とともに何らかの口の中の不具合(入れ歯が合わないなど)によって「噛めない」→「やわらかいものを食べる」→「噛む機能が低下する」そのため「噛めない」と負の連鎖(オーラルフレイル)がおきます。また、硬いものが食べられないことから栄養素が偏り、たんぱく質・ビタミン・食物繊維不足となり、フレイルの要因となります。そうならないためには日頃から食べ方を工夫して食べる力を維持しておきましょう。かかりつけ歯科をもち定期的に口腔のチェックをしてもうらことも重要です。
【食べる力を維持するポイント】
最後に
好きな食べ物がいつまでも食べられること、それもフレイル予防の一つです。またフレイルには身体的フレイルの他に心理的フレイル(うつ・認知機能低下)、社会的フレイル(独居・外出頻度の減少)があります。地域には認知症サロンや介護予防教室など様々な活動を行っている所があります。家から出ることが億劫な方、独りであまり話すことがない方、少しでも気になることがあれば、お近くの地域包括支援センターや栄養ケア・ステーションにご相談ください。
患者様とどのように接しているか
とにかくしっかり話を聞く。
卒業した学校
鈴峯女子短期大学
好きな食べ物
海鮮(特にえび・かに・うに・貝類・・結局のとこ何でも)