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フレイル予防から考える食べること(鈴木 真由美)

 私は管理栄養士として病院、クリニック、通所リハビリ施設、栄養ケア・ステーションで患者様、利用者様、地域の方とお食事や栄養について日々お話ししています。その中で感じた「フレイル予防」のヒントをお伝えさせていただきます。

 フレイルとは、年をとって体や心のはたらき、社会的つながりが弱くなった状態を指します。フレイルの状態を放置してしまうと要介護状態になる可能性が高くなるため、少しでも早く気づき予防することが大切です。身体活動、栄養、社会参加の3つが予防のポイントになります。

〈運動するためにはまず栄養から整えましょう〉

 筋力の衰えを感じ「体力をつけたい」「リハビリをしたい」と言う声は良く聞きますし、実際にリハビリに励まれている方やジムに通っている方も多くいるようです。しかし、運動をするための栄養に関してはどうでしょうか。栄養士も少しずつ地域に出ていますが、まだまだ身近で相談できる存在にはなれていません。筋力をつけるためには、しっかりとした栄養を取って運動をしてほしいと思います。
「年だから食事は少しでいい」ではなく「年を取ったから、沢山は食べられないから若い頃よりも質を意識した食事」を心がけていただけると良いと思います。

〈買い物はフレイル予防に効果的〉

 買い物は週何回行っていますか?筋力が落ちると外出や重い物を持つことなどが大変になってきますよね。買い物に行けないから宅配や配食を利用するのも一つの方法ですが、買い物は目的のある運動であり、外出機会を増やしてくれます。少し大変かもしれませんが、なるべく続けること、重い物が持てなければ運動を兼ねていく回数を増やすことも一つの方法です。動くことで空腹感も感じるでしょう。

 また、いつもの買い物に少し刺激が加わるよう、同じ店で同じ物を買うだけではなく、少し視野を広げてみる工夫をしてみましょう。ここ数年は筋力とたんぱく質の関係に関心が集まり、高たんぱくを売りにする商品がとても増えています。私が「乳製品売り場にはこんな商品もありますよ」とお伝えすると、次回お会いした時には「今まで全然目に入っていなかったよー。便利なものがあるんだね」と返事をいただけることもあります。普段は見ていない棚の上下や違うお店を見てみる時間を作り、楽しみながら買い物を続けていただけると良いと思います。

〈誰かと一緒に食べる事〉

 食事相談に来た方に、行動変容を促す際に周りの方の協力を得ることを提案することもあります。感染症の流行をきっかけに会食の機会も減りました。数年ぶりに仲間と会食の機会があり、参加したところ同年代の方が自身の倍の量を食べているのを見て、私の食事量はこれでよいと思っていたけど少なすぎると気づいた方がいらっしゃいました。痩せてしまった、飲み込みづらい、咽やすくなるなど自身の衰えを感じると誰かとの会食も億劫になりますよね。それがますます外出の機会を減らしフレイルから要介護になってしまうことに繋がります。

 自分だけでは変化に気づかない方も多いので、自身だけでなくご家族や友人、近所の方などにフレイルになっている方がいないか、なりそうな方がいないか少し気にかけていただき早めにサポートいただけたら住み慣れた場所で元気に過ごせる方が一人でも増えるのかもしれません。

最後に

 何のために食べるのか?その答えはきっと1人1人違い、年齢や環境などによっても変わるものだと思います。今の自分にあった食事を見つけて続けていけると良いと思います。
厚生労働省が一般の方向けに公開しているパンフレット「食べて元気にフレイル予防」にはチェックリストものっていますので、定期的に確認していただくのも良いと思います。

参考:厚生労働省パンフレット「食べて元気にフレイル予防」https://www.mhlw.go.jp/content/000620854.pdf

筆者

医療法人社団永生会 永生病院
栄養科 管理栄養士
鈴木 真由美

患者さまとどのように接しているか

栄養だけではなく1人1人の生活の中の食を見つける

卒業した学校

実践女子大学

好きな食べ物

トマト