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低栄養・フレイルサルコペニアの予防や対策(宮澤 靖)

 低栄養・サルコペニアが進行すると、身体の機能が低下することがあります。例えば、日常生活動作が困難になる、転倒しやすくなる、歩行速度が遅くなるなどの症状が現れることがあります。筋力が低下すると、転倒や骨折のリスクが増加することがあります。また、サルコペニアは、心血管疾患の発症リスクを増加させる可能性があります。さらにサルコペニアが進行すると、死亡リスクが増加することがあります(図1)。低栄養・フレイルサルコペニアの予防や対策には、以下のようなことが役立ちます。

図1 フレイルサイクル


1.バランスの良い食事を心がける
 身体に必要な栄養素をバランスよく摂取することが重要です。特にたんぱく質は筋肉の合成に必要不可欠な栄養素であり、適切な量を摂取することが重要です。また、ビタミン・ミネラルも不足しないように、野菜や果物などの多様な食材を摂るように心がけましょう。

 特におすすめのたんぱく質は、ホエイプロテインというたんぱく質で、乳製品から抽出されるたんぱく質です。たんぱく質の種類の中でも、吸収速度が比較的早いため、運動後のたんぱく質補給に適しています。また、筋肉合成に必要なアミノ酸を豊富に含んでいることも特徴です。

 次に紹介するのは、カゼインプロテインです。カゼインプロテインは、ホエイプロテインと同様に乳製品から抽出されるたんぱく質で、ホエイプロテインと比較して吸収速度が遅いため、長時間にわたってアミノ酸が供給されます。そのため、就寝前のたんぱく質補給に適しています。

 また、肉類には、筋肉合成に必要なアミノ酸が豊富に含まれています。特に、鶏肉や牛肉には、多くのたんぱく質が含まれており、比較的低脂肪であるため、筋肉を増やすために適しています。豆類には、植物由来のたんぱく質が豊富に含まれています。特に、大豆には、筋肉合成に必要なアミノ酸が豊富に含まれており、肉類に劣らず筋肉合成に効果的です。


2.適度な運動を行う
 適度な運動は、筋肉を増強し、骨密度を高めることができます。運動と言うまでも日常生活で積極的に動くだけでも効果は期待できます。


3.医師・管理栄養士の指導を仰ぐ
 低栄養、フレイル、サルコペニアになっている場合は、医師の指導を仰ぐことが重要です。医師や管理栄養士と相談しながら、適切な治療や栄養療法を受けることが必要です。


4.ストレスを軽減する
 ストレスは免疫力を低下させるため、免疫力を維持するためにストレスを軽減することが大切です。ストレスを減らすためには、適度な運動やリラックスする時間を持つなどの方法があります。


5.社交的な生活を送る
 社交的な生活を送ることは、認知機能を維持するのに役立ちます。友人や家族と交流を持ち、新しい人と知り合うことが重要です。

 高齢になると、味覚や嗅覚の低下などの身体的変化が起こるため、食事の好き嫌いが増えることがあります。また、健康状態によっても食事の好みが変わることがあります。

 食事を楽しむために、できるだけ個々の好みに合わせたメニューを提供するように心がけましょう。例えば、好きな食材や料理を食卓に並べ、食事中に「美味しいね」と声をかけたりすることで、食欲を刺激することができます。

 好き嫌いが激しい場合は、食事の種類や調理法を変えることも考えましょう。例えば、野菜嫌いな場合は、スープやジュースにしたり、野菜をすりつぶして調理するなどの工夫が必要です。食事の量や頻度についても、個々の健康状態に合わせて調整することが大切です。

 例えば、消化器系の問題を抱えている場合は、少量の食事を頻繁に摂取するなど、消化に負担のかからない方法を検討しましょう。高齢者が一人で食事をすると、つい主食ばかり食べてしまうことがあります。一緒に食事をする人を増やすことで、会話や楽しみを持ち込みながら、バランスの良い食事を摂るように促すことができます。

 また、最近では疾患に対応した宅配弁当もかなり充実してきました。糖尿病や高血圧、腎疾患など、それぞれに対応した栄養バランスを管理栄養士が考えてご自宅まで宅配をしてくれます。お食事は毎日のことでご家族もご負担が大きくなってしまいます。安心してご自宅で治療食を食べることができ、介護のご負担も軽減できることが可能なサービスを利用してみることもお勧めします。

筆者

東京医科大学病院 栄養管理科
科長 宮澤靖

患者様とどのように接しているか

病態を把握して個別に対応するとともに患者さんのご家庭の食文化を大切に寄り添ったアドバイスに心がけています。

卒業した学校

北里大学保健衛生専門学院
徳島大学医学部大学院

好きな食べ物

お寿司