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積極的な栄養摂取でフレイル・サルコペニアを防ごう!(山田 悠史)

フレイルってなに??

 フレイルとは、「加齢により心身の活力が徐々に低下した状態」を表した言葉で、転倒や日常生活の障害、要介護の発生、死亡リスクの増大の要因となると言われています。「健康」と「要介護状態」の中間点といえば分かりやすいのではないでしょうか。

また、フレイルには身体の衰え(フィジカルフレイル)だけでなく、社会性の衰え(ソーシャルフレイル)・心、認知の衰え(メンタルコグニティブフレイル)といった様々な側面があります。社会や人とのつながりが減り、家に閉じこもりがちになってしまうことで少しずつ身体の衰えが出始めます。そのため、社会とのつながりを失うことがフレイルの入口と言われています。
身体の衰えが進んでいくと食べる機能が低下してしまい、体重が落ち、徐々に要介護の状態へと陥ってしまいます。そのため、フレイルの兆候に早く気づき悪くならないように維持、改善へとつなげていくことが大切です(図2)。

サルコペニアとは??

 サルコペニアとはギリシャ語で「筋肉」を意味する「sarco(サルコ)」と「喪失」を意味する「penia(ペニア)」からなる造語で、「加齢による骨格筋量の減少」として提唱され、フレイルの大きな要因の一つと言われています。加齢以外にも、エネルギー、たんぱく質などの摂取不足からなる低栄養、身体活動量の減少がサルコペニアの原因となります。

フレイル、サルコペニアを防ぐには!

 若い年代では、「生活習慣病・メタボ予防」という過剰な栄養を控えるという考え方が健康的な食生活として一般的ですが、高齢者においては、「低栄養予防」がベースとなり、適切かつ積極的な栄養摂取をするという考え方へシフトチェンジしていくことが必要となってきます。食事だけでなく、ウォーキングやストレッチ、トレーニングといった運動を行うことも体重・筋肉量や筋力を維持、強化するためには重要です。

フレイル、サルコペニアを防ぐために必要な栄養!

1.体力低下を防ぐ適切なエネルギー量の摂取

表1 日本人の食事摂取基準(2020年)

日本人の食事摂取基準2020では表1が必要量となりますが、体力低下を防ぐためのエネルギー量としては、適正体重を維持できるエネルギーが目安となります。BMI※1(Body mass index 身長と体重から肥満度を示す指標)や体重の変化を確認していく必要があり、毎日200~300kcal不足し続けると1か月で体重が1kg落ちてしまうと言われています。炭水化物、たんぱく質、脂質をバランス良く摂りエネルギーを確保していくことが大切です。

※BMI 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出することができます。(目標値は表2参照)

表2 目標とするBMI値

2.筋力・筋肉量維持に重要な栄養素となるたんぱく質の積極的な摂取

たんぱく質は、骨や筋肉、血など身体を作るもとになるため、高齢者には特に重要な栄養素と言われています。日本人の食事摂取基準2020では、75歳以上の推奨量は男性:60g/日 女性:50g/日となります。たんぱく質は肉、魚、大豆製品、卵などに多く含まれています。特に肉・魚をしっかり摂ることをお勧めしています。

☆筋肉を増やすと注目されている栄養素!!
・BCAA(分岐鎖アミノ酸)
アミノ酸はたんぱく質を構成する成分でBCAAは筋肉に多く含まれるアミノ酸「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の総称です。特に「ロイシン」は筋たんぱく合成を促進する働きがあると言われています。BCAAは必須アミノ酸であり、体内で合成することができないため、食事等で摂る必要があります。効率良く摂取するためには「ロイシン」を多く含んだプロテインや補助食品等を利用するということも工夫の一つです。

・HMB(β‐ヒトロキシ‐β‐メチル酪酸)
HMBはロイシンから生成される成分で筋量を維持または回復させる働きがあると言われています。しかし、ロイシンからはわずか5%しか生成されないため、主にサプリメントでの摂取となります。近年はスポーツ業界も含め、筋肉合成の促進、分解を抑制する効果があるとして注目されている成分です。
運動直後は筋肉のゴールデンタイムとも呼ばれており、BCAAやHMBを摂取すると筋たんぱくの合成が増強すると言われています。食事だけでなく、レジスタンス運動(筋力トレーニング)と併用することも大切なポイントです。

最後に

 たんぱく質を中心とした積極的な栄養摂取と運動を行うことで体重・筋肉量や筋力を維持、強化することができ、フレイル、サルコペニアの予防へとつながります。最近では、エネルギーやたんぱく質が強化された食品や栄養補助食品も増えてきています。スーパーや薬局で購入する時には、栄養成分表示の確認を心がけると良いでしょう。

筆者

名古屋市立大学病院
臨床栄養管理室 副室長
管理栄養士 山田悠史

患者様とどのように接しているか

ライフスタイルに応じたアドバイスを心がけています

卒業した学校

東海学園大学

好きな食べ物

焼肉/ラーメン