mealtime

「しっかり食べて元気にフレイル予防」の定着を目指して(小野 詠子)

 高齢者が可能な限り住み慣れた地域において自立した日常生活を送れるよう、保健師、社会福祉士、ケアマネジャーが介護だけでなく保健・医療・福祉に関する総合的な支援を行う総合的窓口のことを地域包括支援センターと言い、倉敷市では高齢者支援センターと呼び、市内25か所に設置されています。

私は老松・中洲高齢者支援センターの依頼を受けて年に2回程度、介護教室で骨粗鬆症やフレイル予防についての講義や、料理教室で関わらせていただいています。参加されるのは地域にお住いの60代から90代の方で、9割が女性です。皆さんお元気で毎回賑やかな教室になります。
高齢者支援センター開設以来、私も10年以上は関わっています。毎回、骨粗鬆症やフレイル予防についてお話をさせていただくのですが、参加される皆さんはいったいどのくらい理解されているのか、このたびアンケートを取らせていただきましたので紹介します。

【アンケート内容】

対象:令和5年11月に実施した介護教室(2か所)に参加された42名。
(60代3名、70代24名、80代11名、90代2名、不明2名)

Q1:フレイルという言葉を聞いたことがありますか、また、意味が分かりますか?

A:聞いたことがあるし、意味も分かる38名、聞いたことはあるが、意味が分からない3名、聞いたことがない1名。

Q2:フレイルという言葉をどこで聞きましたか?

A:この教室22名、新聞やTV12名、その他7名

Q3:自分がフレイルかどうかわかりますか?

A:自分はフレイルだ1名、フレイルではない20名、フレイルかもしれない12名、分からない9名。

Q4:フレイルにならないためにどうすればいいか知っていますか?

A:知っている33名、知らない9名。

なんと、毎年フレイル予防について講義をしていましたが、フレイルを理解している人は90%にとどまりました。知らない、意味が分からないという人がいたり、自分がフレイルかどうか分からない人もいました。

そもそも人は忘れる生き物です。復習しなければ1日後には約70%を忘れてしまうし、記憶力が年と共に低下するのもやむをえません。しかし、せっかくフレイル予防の講義をしているので長く覚えておいて今後に生かしてもらわなければいけません。
聞くだけ、よりも体験を通した学習の方が学習定着率が高いと言われていますので、講義内にはクイズを多く取り入れています。たんぱく質の多い食品のイラストに対し、順位を空欄にしておいたり、最後には○×クイズやカルタの穴埋めで知識の確認をします。毎回提示している「さあにぎやかにいただく」は一文字ごとにみんなで声を出して確認しています。

『さあにぎやかにいただく』

 ここで「さあにぎやかにいただく」の再確認をしておきましょう。 できるだけ多くの種類の食品を摂取するための合言葉として考案された「さあにぎやかにいただく」が全部言えますか?

かな、ぶら、く、ゅうにゅう、さい、いそう、も、まご、いず、だもの)
ぜひ口に出して確認してください。

さまざまな食材を食べると、体に必要な栄養素が自然ととれます。10の食品を毎日食べている人は、高齢になっても元気に生活していることが分かっています。毎日7つ以上を摂取することが望ましいです。「さあにぎやかにいただく」のチェックリストを家の冷蔵庫に貼り、食事のたびに確認してみましょう。数日間チェックしてみると、自分の家庭の特徴が分かります。実は肉を食べていなかったなとか、果物は毎日とれているなとか。偏りがなければそれを継続していただき、不足があれば次の食事では何か1つ増やすことから始めましょう。

アンケートの最後の質問でフレイルにならないために取り組んでいることを聞きました。
散歩や体操などの運動43名、たんぱく質、カルシウムなどを摂取する食事5名、外出や社会参加7名でした。フレイル予防=筋力を落とさない=運動になっていることが推察されます。もちろん運動も大切なのですが、運動だけではいけません。食べずに運動すると、エネルギーが足りないので自分の筋肉を分解してしまい、運動しても筋肉は増えないのです。動くためのエネルギー摂取、筋肉のためのたんぱく質の摂取、骨のためのカルシウム摂取・・・、栄養がとれているから運動の効果が出るのです。運動+栄養が揃ってこそフレイル予防になるのです。さあにぎやかにいただいたその後で、こまめに運動をしましょう。

しっかり食べて元気に過ごすこと。みなさんの中にフレイル予防が定着し、日々の暮らしに馴染みこむよう、これからも楽しくわかりやすい説明を続けていきたいと思っています。

筆者

社会医療法人全仁会
倉敷平成病院 栄養科
管理栄養士 小野詠子

患者様とどのように接しているか

ちょっとしたことでも言える、身近な存在でありたいと思っています。

卒業した学校

ノートルダム清心女子大学

好きな食べ物

ハード系のパン、チキン南蛮