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もしかしたらフレイルかも?まずは気づくことが大切(塩野崎 淳子)

 近年、メディアや行政機関の啓発によって『フレイル』という言葉が徐々に社会に浸透してきています。しかし、もし高齢の方が実際に『フレイル』や『フレイルの前段階(プレフレイル)』にあったとしても、そのことに自覚がないまま低栄養や筋力低下が進んでしまっているケースをよく見聞きします。

ある糖尿病の高齢男性は体力の衰えを感じて病院を受診しました。男性は食欲が低下して食事量が減っているのにも関わらず、糖尿病の薬はしっかりと服用していたので、どんどん体重が減少していました。当然、体脂肪だけでなく筋肉も落ちて歩くのもやっとという状態になっていました。高齢になると現役世代とは違い、血糖値の管理も少しゆるやかになります。厳密な血糖管理のためにフレイルになってしまっては本末転倒です。食事量が落ちて、体重減少が続く場合は早めに主治医に相談して服薬の調整や外来栄養指導を受けるなどし、「思いがけないフレイル」を防ぐことも大切です。

 また、フレイルを予防するためには「社会とのつながり」が重要であることが明らかになってきました。独居やひきこもりによって社会的に孤立状態にある人を『社会的フレイル』と呼び、身体的フレイルと重なると要介護リスクが高まると言われています。しかし、実際にひきこもっている人が「私はフレイルかもしれない」と自覚することは難しいでしょう。家族や友人、地域の方の声かけや趣味の会などへの勧誘、町内会など地域活動への参加が、結果的にフレイル予防につながっていくことが期待されます。東北大学大学院医学系研究科の公衆衛生分野の第一人者である辻一郎名誉教授は、長年「健康寿命」について研究されてきました。辻先生は、フレイル予防のために「きょうよう」と「きょういく」が重要であると啓発しています。「きょうよう」とは、「今日、用事がある」、「きょういく」とは「今日、行くところがある」という意味です。今日、用事があるから出かける準備をします。出かけるためにはしっかりと朝ごはんを食べます。出かけて活動したらおなかが空きます。家族や仲間と食事を共にしてもいいですね。一日中家に引きこもっていると食欲が湧かなくて当然です。「フレイルを防ぐための食事をする」というより「毎日しっかりと活動していたら結果的にきちんと3食食べられていた」という生活が理想的だと思います。

 フレイルが進行する背景には、心身の老化現象や持病の悪化がありますが、食事摂取内容を工夫してしっかりと必要な栄養量が摂れるようになると、徐々に活気が出てくる方も少なくありません。活動するためのエネルギー量が不十分だったのでしょう。世間では「フレイル予防にたんぱく質を」との啓発をよく見聞きしますが、たんぱく質の前にまずはエネルギー源(主食)の確保が重要です。食べた栄養をエネルギーに変えるために必要なビタミン類や鉄、亜鉛などのミネラルの栄養素が不足していることもあります。しかし、一般の方が自分で微量栄養素の不足を自覚するのは難しいと思いますので、病院や施設などの管理栄養士に日常的な食事内容を確認してもらい、栄養が足りているのかのチェックをしてもらうとよいでしょう。最近はドラッグストアに管理栄養士が勤務していることもあり、ある薬局では「ワンコイン栄養相談」などを実施しています。気軽に相談できる「かかりつけ管理栄養士」を持っておくと心強いですね。

重い障害や難病のために在宅医療を受けている方も、比較的元気な高齢者の方でも、「活動する→おなかがすく→しっかり食べる→夜はぐっすり眠る→しっかりと出す(排泄)」というサイクルが整っていることが、フレイル予防と健康維持の基本です。

インスタント袋めんも野菜とたんぱく源
(ウインナー)を乗せてバランスよく

筆者

しおのざき管理栄養士事務所
管理栄養士
塩野崎 淳子

患者様とどのように接しているか

「丁寧にじっくりと聴く」ことを大切にしています。

卒業した学校

女子栄養大学栄養学部実践栄養学専攻

好きな食べ物

クラフトビール