「痩せ願望の18歳、81歳望んでないのに低栄養」(松岡 良平)
人は日常の食生活において、ちゃんと食べていれば「肥満」「低栄養」など太りすぎ、痩せすぎの偏りを招くことはないのです。しかしながら、人生は不思議なもので体格に対する若い時代の考えは、可能な限りスマートな体格にあこがれを抱くようです。そして、高齢者の範疇になると、なぜか今まで食していたほどの喫食量を確保できない方がいらっしゃいます。そんな中で、今回は高齢者に目を向けて「低栄養」を一緒に考えてみましょう。
まずは、若い人の痩せ願望のこと
若い世代の方の太っているという意識とダイエットで痩せたいという人の調査結果を見つけました。
自分を「太っている」と思う女子はなんと49%!
『あなたは現在、ご自身が太っていると思いますか?』という質問に対して、「太っていると思う」と回答した人が49.0%という結果になりました!やっぱり太っていることは女性がかなり気にするポイントのようです。
現在、約3人に1人の女性がダイエットをしている
『あなたは現在ダイエットをしていますか?』という質問をしたところ30.2%と3人に1人が既に「ダイエットをしている」ことが判明。また、42.8%が「ダイエットをしていないが、今後したいと思っている」と回答し、全体の73.0%の人に、ダイエット意向があることがわかりました!
太るという現象は、通常その人にとって必要な栄養素量以上の人体への摂取と生活習慣内での消費量の不足が原因です。食べた食事の消化・吸収を正常な機能を維持した消化管は、余剰熱量を体脂肪として廃棄することなく体の腹腔内(内臓脂肪)、皮下組織(皮下脂肪)へため込みます。いつか飢餓が訪れたとき、餓死しないように準備をしてくれているのです。すばらしい生理機能ですね。
食べ過ぎないこと・動くことが理想的な身体を作る
よく巷では「バランスの良い食事」と表現されますが、どのような食事を指すのでしょうか。単刀直入の表現をすれば、“今まで食べていた食品・料理以外のものを食べてください”と説明しています。「ばっかり食」を否定するのではなく、プラス表現を伝えています。「あれもこれも食」です。他食品を摂取することで今まで単品摂取していた食品・料理の分量を必然的に減らすことを推奨します。
要は今まで食べていた食習慣を少しでも変化させることが大事なのです。なぜなら、今までの食生活で現在の身体・体調が構成されているのですからね。現代は過去の生活と異なり、便利さを追求したがあまり生活活動動作の減少が顕著です。サラリーマンはデスク配置されたコンピューターでの業務が中心になり、出先への訪問が以前より少なくなりました。ワークジョブの在り方が変わってきたのです。
医療・福祉の世界では「低栄養」という言葉が認識されてきています。特に高齢者における栄養状態の悪化を認めることがあり、それによる生活動作の低下、運動機能の充実が見られないという状態を散見することがあります。自覚する低体重であるならば、事前対応が可能ですが、自覚しない体重減少を見過ごすと健康体格に復活させることに時間を要します。統計上でもBMI低値では生存率が下がるという結果が出ています。
では、高齢者の低栄養とは何でしょうか。定義を考えてみましょう。
「栄養素の摂取が、生体の必要量よりも少ない時に起こる身体変化。必要な量・種類の栄養素が摂れていない状態」。高齢になると食事の量が少なくなり、あっさりしたものを好む、食事に偏りが生じやすくなり、たんぱく質・熱量が不足してきます。また、生野菜・肉類が減るとビタミン・ミネラル不足、噛み応えのあるものを避けると食物繊維が足りなくなります。要は食欲が減ると栄養不足により身体機能が低下し、それによってさらに食欲が低下していくという負のサイクルに陥ります。
食欲不振の症状
- お腹がすかない
- 食事をする気にならない
- 食べ物が偏る
低栄養状態になると
- 免疫量が落ちる
- 骨がもろくなる
- 皮膚の炎症が起こる
- 水分不足になり脱水症状につながる
- 低血糖にも注意
表1、図1より、どの年代でも加齢による体重変化は否めません。
では、なぜ高齢者の食欲低下、年を取ると食欲がなくなる?
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターによると
器質的な疾患(原因となる病気があるもの)
摂取した食事の消化吸収を司る臓器が病気になると、せっかく頑張って食べても、処理ができないため、「食べなくてイイよ」と脳に信号が送られて食欲が低下、体重が減少してきます。高齢者では内臓関連の知覚が衰えて腹痛などの症状が出にくいので、悪性疾患でも良性疾患でもかなり進行した状態で発見されることが少なくありません。
機能的な疾患(原因となる病気がはっきりしないもの)
高齢になると飲み込む能力(嚥下機能)が低下して、1回の食事量が減少し、これが持続することで食欲に影響を及ぼすことがあります。味やにおいを感じることが弱くなることも食欲低下の一因と考えられます。消化吸収を司る臓器、特に胃腸の機能が加齢により低下すると、やはり食べたものを体内で処理しきれないので食欲が低下してきます。高齢者では症状が乏しく見過ごされている場合が少なくないです。
そこで当院の訪問看護ステーションにて、訪問看護業務を日々頑張っています看護師に在宅での栄養管理上の問題点をインタビューしてみました。
①在宅患者と入院患者との栄養介入の違いを一言で?
入院された患者は、病院内での療養環境が整っているため、真の日常生活状態の把握は不可能でしょうね。食事は病院が準備したものを召し上がっているから自炊状態は確認できない。在宅での療養は、実生活そのものなので不具合を隠しようがないですね。実態把握ができる。
②訪問時、患者・家族の栄養問題意識の具体例を?
患家訪問時にある行動をします。それは、台所・リビングのゴミ箱を確認すること。厨芥物内容で、その患者の食生活が垣間見られるのです。言葉ではバランスの良い食事をしていると言いながら、実際は多くのスナック菓子包材が破棄されていると、野菜・乳製品・大豆加工品の摂取されているのかなと疑ってしまいますね。
③在宅訪問管理栄養士に期待することは?
患者の方から、一緒に食事をしてほしいと言われることがあるようです。栄養士が調理して食事提供するだけでなく対象者の喫食状態も観察することで姿勢を含めた食べ方、食事分量、食事時間の確認が出来ますよね。全人的な様子伺いを是非してほしいです。そのためにはまず、対象者との信頼関係を構築してほしい。病院を出よう。向かうは患者宅です。
どんな食事が低栄養防止・改善によいのか。
まずは、和食の基本、一汁三菜。ご飯に汁物、三種の「おかず」を組み合わせた献立。主食はエネルギー源、汁物は水分補給やお口直し。三菜は主菜1品と副菜2品。肉・魚・大豆・卵でたんぱく質補給。血液・筋肉の原料。副菜2品は野菜・豆類・芋類・海草でビタミン・ミネラル・食物繊維で体調維持。食欲が出るまでは1品当たりの分量を少なくし、これくらいだと一口で食べられると思ってもらえたら完璧です。最初は食欲起爆の印象で。
不足栄養素は近所の薬局・薬店・スーパーマーケットで販売されている「サプリメント」、「栄養補助食品」で補えればいいと気楽に感じてください。
意外と「クロワッサン」は高熱量。キッシュに卵黄を入れて高たんぱく質にできる。から揚げに「マヨネーズ」を加えてみてエネルギー確保できて、おいしくなります。
食べられそうなものをあらかじめ準備する
それでも食欲がない時は、のど越しが良く消化のよいもの、冷たくてさっぱりしたものなどが好まれます。粥、雑炊、茶漬け、うどん、そうめん、茶わん蒸し、プリン、ヨーグルト、ゼリー、酸味の強くない果物などはおススメです。食べたいときにすぐ食べられるように、作り置きや冷凍保存しておくのもよいのではないでしょうか。
困ったときは、“たいしたことはないから大丈夫”と放っておかずに受診して、医師や管理栄養士に相談しませんか。管理栄養士は栄養や食の専門家として、健康の維持・増進と疾病の予防・治療目的に病院・福祉施設・学校・行政・企業に配属されています。特に病院・診療所において入院中や外来通院患者の食事や栄養の管理・相談を行っているので、ぜひお声かけください。
筆者
患者様とどのように接しているか
栄養相談では対象者が不明点解決することが目的です。栄養士側の自己満足は許されません。
卒業した学校
兵庫栄養専門学校(廃校)
好きな食べ物
巻き寿司