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しっかり食べて予防する透析患者のサルコペニア(岩﨑 早耶)

 私が勤める西の京病院は4つの透析センターを併設し、約350名の透析患者さんに治療を提供しています。透析患者さんのサルコペニア発症率は高く、早期からの運動・食事療法がとても重要です。当院では透析患者さんがしっかり食べて元気に透析治療を受けられるよう、医療スタッフがチーム一丸となってサルコペニアの予防と対策に取り組んでいます。今回はその経験から透析患者さんのサルコペニア予防についてまとめました。是非参考にしてみてください。

透析とサルコペニア

 サルコペニアとは加齢や食事摂取不足、運動量の減少などが原因で筋肉量が低下した状態をいいます。筋力の低下は活力の低下や消費エネルギーの減少、食欲低下をもたらし、しだいに低栄養に陥り、サルコペニアをさらに進行させます。この状態が続くと転倒や歩行障害がおこり要介護となるリスクが高くなります。この一連をフレイルサイクルといいます(図1)。

図1 フレイルサイクル

透析患者さんは、活動量の低下や合併症の出現など病態特有の因子から運動機能が非常に低下しやすいです。また表(1)のように様々な要因から食事摂取量が不足し、低栄養になりやすい状態です。透析による栄養素の損失なども考慮して十分な栄養量を摂取しなければなりません。一度筋力が低下すると戻すことはとても大変なので、できるだけ早めに予防することが大切です。

表1

食事と運動どちらも大切

 透析患者さんでは、1回4~5時間程度の透析を週3回程度ベッド上で受けるため、1日のうちで活動量が大幅に低下してしまいます。そのため運動療法はとても大切なので、積極的に実施しましょう。透析患者さんの運動療法ではウォーキング等の有酸素運動と筋肉に抵抗をかける動作を繰り返すレジスタンス運動の2つが特に推奨されています。運動療法は長期間継続することで効果が得られます。 また、十分に栄養量が摂れていない状態で運動療法を行うと、自分の筋肉を壊してエネルギーに変えてしまい、より低栄養を悪化させます。運動療法を実施する場合は、低栄養対策も並行して行うとより効果的でしょう。

食事療法のポイント

①基本の食事療法

1日に必要なエネルギー量の目安は標準体重×30~35kcalで算出します。たんぱく質量は標準体重×0.9~1.2gです。このエネルギーと蛋白質の摂取量が守れていれば筋肉量は減少しにくい傾向にあると言われています。

例) 160㎝の場合 

標準体重の計算 身長²×22  1.6m×1.6m×22=56㎏

1日の必要エネルギー量 標準体重56㎏×30~35kcal=1680~1960kcal

1日の必要蛋白質量   標準体重56㎏×0.9~1.2g=50~67g

②1食の目安量を知る

1食の目安の栄養量を知ることで栄養量の不足に気づくことができます。1日の必要量を朝昼夕食3:4:3の割合に分けて摂取しましょう。

【1日必要栄養量 1700kcal、蛋白質60gの場合】

エネルギーの基本となる主食は必ず摂るようにしましょう。またサルコペニアと低栄養予防には蛋白質の摂取が重要です。毎食主菜となるお肉、お魚、卵、大豆製品等をとるようにしましょう。

また透析患者さんでは特に透析日に蛋白質が目標量に達していない人が多いようです。透析後のお食事が普段よりあっさりしている又は食べずに抜いている人は栄養不足の可能性が高いです。食事を抜くことは極力控え1日3食を基本にしっかり食べましょう。外食やコンビニでお食事をされる場合でも工夫して主食と主菜をそろえるようにしましょう。

③栄養量が不足する場合は食材の選び方、調理方法を工夫してエネルギーアップしましょう。

栄養量が不足していると感じた人は、食材の選び方や調理方法を工夫してみましょう。下記の様に少し選び方を変えるだけでもエネルギーUPに繋がりますよ。

栄養補助食品を活用しましょう。

 栄養補助食品にはゼリー、ドリンクタイプや粉末のプロテイン、中鎖脂肪酸油等様々な種類があり好みに合わせて選ぶことができます。不足している栄養素を補う目的で使用しましょう。中にはリンやカリウム量が多いものもあります。医療スタッフに相談してから開始することで安全にご利用いただけます。

最後に

 食事や運動療法を進める場合はまず医療スタッフに相談してみましょう。

医療法人康仁会 西の京病院
栄養管理部 管理栄養士
岩﨑 早耶
 

患者様とどのように接しているか

信頼してもらうことと、気軽に相談してもらえる関係作りを意識しています。

卒業した学校

武庫川女子大学 食物栄養学科

好きな食べ物

ネギトロ軍艦