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蛋白質の摂取目標量はどれくらい?私は摂れている?(中川 裕加)

 健康で生き生きとした毎日を過ごすためには、自分でどこでも行ける、歩けることが大事です。歩くためには筋肉が不可欠です。この大事な筋肉をいつまでも維持するためには、筋肉の材料となる蛋白質が重要となります。

1.自分の蛋白質の摂取目標量を考えたことがあるでしょうか?

 実際に栄養指導で日々患者さまの食生活をお伺いしていると、ほとんどの方が目標量に達していません。よくあるケースは、「朝は時間がないから簡単に」、「昼は一人だから簡単に」、「夕はあるもので簡単に」と、毎日仕事などで忙しい方や、独居で1人分は作りにくい、調理が面倒など、生活状況は様々ですが、孤食化が進み、食生活の簡素化が進んでいるのを感じます。この簡素化のほとんどが、おにぎりだけ、そうめんなどの麺だけ、食パンや菓子パンだけなど、炭水化物に偏った食事であり、蛋白質が足りない食事となっています。

 まずは自分の食生活の傾向を知り、どのように改善すると健康的で生き生きした毎日につながるのか、考えていきましょう。

2.目標量が摂れているでしょうか?

 まず、自分の筋肉のために必要な蛋白質の目標量を考えてみましょう。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、高齢者(65歳以上)では、フレイルおよびサルコペニア発症予防を目的とした場合、少なくとも1.0g/㎏体重/日以上の蛋白質を摂取することが望ましいとされています。

 例えば体重50㎏の方の場合、蛋白質が少なくとも50g/日必要ということになります。

 さらに高齢者では、若年及び中年成人に比べ、筋肉をつくる力が低下するので、若い頃より多くの蛋白質を摂取する必要があります。筋肉を増やすためには、体重の1.2~1.5倍の蛋白質、つまり、体重50㎏の方では60g~75gの蛋白質摂取を目標にすると良いでしょう(腎疾患のある方はかかりつけの医師へご相談の上、検討してください)。

 1日60gの蛋白質摂取量を目標とした場合、肉や魚が60gというわけではなく、肉や魚等の食材に含まれている蛋白質が60gです。よく摂取する食材に蛋白質がどの程度含まれているのか、考えてみましょう(図1)。

日本食品標準成分表2023年(八訂増補)

図1 食材に含まれる蛋白質量


 例えば、朝は卵1個、牛乳コップ1杯程度は摂取できる方も多いかと思います。昼は肉や魚の摂取はなく、麺だけやおにぎりだけなどはよくある簡易的な食習慣です。夕食では多くの方が肉か魚を手のひら程度(約80g)は摂取されています。この場合、主食以外の食材からの蛋白質摂取量は約28gです。ご飯や麺にも植物性の蛋白質が入っていますので、主食からの蛋白質摂取は概ね10g程とすると、合計約38gしか蛋白質が摂れていないことになります。あと20g程の蛋白質を追加することで、目標量に達することができます。

 1日の蛋白質摂取目標を60gとすると、1食20gを目安に蛋白質を摂取すると良いです。朝食を抜かれる方は1日2食となりますので、1食で30gの蛋白質を摂らないと目標達成は難しいです。

 先程の昼食が麺だけ、おにぎりだけのケースでは、昼食に蛋白質の多い食材が足りないので、上の表を目安に蛋白質15~20g程度が含まれる食材を摂取する必要があります。肉・魚が食べにくい場合は、冷奴を追加したり、野菜の和え物をツナ和えにする等で、蛋白質を少量ずつ追加できます。茹で卵を常備しておくこともおすすめです。調理が難しい場合は、缶詰や冷凍食品も活用すると良いでしょう。また、間食にヨーグルトやチーズなどの乳製品を取り入れるのも良いです。

 このように、蛋白質をいつでも追加できるよう、蛋白質が多く含まれる食材を常備しておくことが大事です。準備しておくと、今の生活に少し工夫を加えるだけで、目標の蛋白質摂取量に達することができます。また、夕食にまとめて摂るのではなく、日中の活動的な時間、朝食・昼食に蛋白質をしっかり分散して摂取することも、筋肉を増やすためには重要です。

 今回は蛋白質についてお話しましたが、エネルギーを十分に摂取し、適正体重であることもフレイル予防のためには重要です。日々の少しの積み重ねを継続することで、いつまでも自分の足で歩き、好きな所へ行くことができ、より健康で生き生きとした毎日に繋がります。皆様の人生がより豊かなものとなるための一助となれば幸いです。

筆者

飯塚記念病院 栄養相談室
管理栄養士 中川 裕加

患者様とどのように接しているか

患者様の生活に寄り添い、実行しやすいプランの提案を心掛けています。

卒業した学校

くらしき作陽大学

好きな食べ物

もも