フレイル予防で健康寿命を延ばす(飯島 令子)
フレイルと健康寿命
健康寿命を延ばすには、フレイル予防が重要!と言われています。フレイルは「健康」と「要介護」の中間で、心身が衰え始めた状態のことを指します。日本人は男女共に平均寿命が世界トップレベルですが、健康寿命は平均寿命より10年ほど短くなっています。介護を必要とする高齢者の多くがフレイルの段階を経ていますので、いつまでもイキイキと自立した毎日を過ごすために、フレイル対策に取り組んで健康寿命を延ばしましょう。
健康長寿のための3つの柱
フレイル予防に欠かせないのが、「栄養(食生活・口腔機能)」「運動」「社会参加」の3つの柱です。この3つの柱は相互に影響しあい、どれかひとつが不足しているとバランスを崩してしまいます。この3つ柱を一緒に改善していくことが理想的とされています。
元気な身体づくりに必要な食事と栄養
①上手にバランスよく栄養を!!
単品の食事より、主食・主菜・副菜をそろえることで、バランスよく栄養をとることができます。加齢とともに食欲が落ちやすくなりますが、食事を抜いたり、偏った食事をしていると必要な栄養を十分にとれない危険性があり、フレイルになるリスクも高まります。
②低栄養状態には注意が必要!!
「低栄養状態」とは、身体の活動に必要なエネルギーやたんぱく質が足りていない状態で、フレイルを引き起こす危険な兆候とされています。メタボ対策を意識されていた方や高齢者は、肉や卵、脂の多い食事は避けた方が良いと考えている人も多いようです。しかし、65歳を過ぎたら、メタボ対策から低栄養対策へと徐々に切り替えていく必要があります。
③たんぱく質の摂取が重要!!
低栄養状態に陥る最大の原因は、たんぱく質の不足です。たんぱく質が不足すると、筋肉をつくる力も低下し、筋肉量が減少します。食事の量が減ってエネルギー源となる食べ物が不足すると、体は筋肉を分解して必要なエネルギーを補いますので、さらに筋肉が減少してしまいます。また、たんぱく質は筋肉のみならず記憶力や思考力にも関係が深い栄養素ですので、不足させないことが重要です。
④たんぱく質を上手にとるために
まずは肉類を1日1回は食べるように心掛けてみましょう(図1)。1食あたりの量は、自分の手のひらにのるくらいが目安になります。その上で、魚類・卵・大豆製品・乳製品を、3食のうちどこかにプラスすれば、ビタミンやミネラルなどの栄養バランスも良くなります。
飽きずに食べられる工夫としては、毎日同じ肉ばかり食べるより、鶏肉・豚肉・牛肉など順番に食べる方が味の変化や栄養素の幅も広がります。1度の食事で量が食べられないなど、不足しそうなときは、1品は間食でたんぱく質を補給するのもおすすめです。卵や乳製品を使用している洋菓子類には比較的多くのたんぱく質が含まれています。
⑤カルシウム、ビタミンD・Kはとれていますか?
食事からのカルシウムが不足すると、骨粗しょう症を発症し、骨折しやすくなります。カルシウムは、イワシなどの魚類や乳製品、海藻類、厚揚げなどに多く含まれています。ビタミンDやビタミンKは、カルシウムと一緒に摂取すると、骨密度を高めてくれます。
ビタミンDは、卵、鰻、きくらげ、シラス干しなどに多く含まれ、ビタミンKは、納豆、小松菜、モロヘイヤ、ほうれん草などに多く含まれています。ウォーキングなどの運動や太陽光を浴びることも、骨を強くするためには効果的です。
口腔ケアを意識していますか?
「噛めないものが増えてきた」「食事をよく食べこぼすようになった」「むせることが増えた」「活舌が悪くなった気がする」など、口腔機能の小さな衰えをオーラルフレイルといい、フレイルになる前兆として現れます。
口は会話をしたり、表情をつくったりと、コミュニケーションにも重要な役割を果たしていますので、「社会参加」にも大きな影響を及ぼします。また、美味しい物を美味しく食べるためにも、口腔内を清潔に保つことが大切です。歯周病を予防し、定期的な歯科受診も心掛けましょう。
口腔機能の維持・改善にはパタカラ体操が効果的
口腔機能が弱り始めてきたら、パタカラ体操がおすすめです。特に食事の前に行うと効果的です。
①「パ」「タ」「カ」「ラ」をそれぞれ5回ずつ、口をしっかりと動かしながら、ゆっくり力強く発音してみましょう。
②「パタカラ」と続けて発音し、5回繰り返します。
まずはご自分のペースで、フレイル予防に取り組んでみてはいかがでしょうか。
筆者
患者様とどのように接しているか
入院と在宅をシームレス繋ぐ要となれるよう努めています。
卒業した学校
服部栄養専門学校 栄養士科
好きな食べ物
えび
吉村家のラーメン(麺の固さ:やわ、トッピング:野菜畑と海苔)