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「あれ、むせた?」がサイン。一生おいしく食べるための新習慣(川上 璃花)

みなさまの美味しいを支えたい~ 阪和第二泉北病院 嚥下外来

当院は療養型がメインのため患者様、ご家族様からも「できる限り口から食べさせてほしい」といった要望を受けることが多くあります。人生の最後まで、ご自身の口でおいしく食べていただきたい。私たちはそれを全力で支えたいと考えています。
そんな当院で2021年より院内公募でスタートした「最後まで口から食べることを日本一支援する病院」プロジェクトでは、外来、入院患者様に他職種で嚥下に関する取り組みを行っています。

嚥下外来スタッフの皆様

「あれ、むせた?」がサイン。一生おいしく食べるための新習慣

今回は、ぜひ皆さまに知っておいていただきたい「お口の健康に関する大切なサイン」をご紹介します。
「最近、喉がつっかえるような感じで食べ物が飲み込みづらくなった」
「お茶を飲むときや、食事中にむせることが増えた」

こんな症状に心当たりはありませんか?実はそれ、もしかすると『オーラルフレイル』かもしれません。

年齢を重ねると、多くの人が「足腰の筋力」を気にかけ、散歩や運動を始めます。しかし、実は同じようにケアが必要な場所が、私たちの「喉(のど)」です。食べ物をかんで、スムーズに飲み込む。この当たり前の動作にも、喉や口の周りの筋肉が欠かせません。足の筋肉が衰えれば歩きにくくなるように、喉の筋肉が衰えれば、食事や水さえも飲み込みにくくなります。

オーラルフレイルとは、そういった「かむ」「飲み込む」「話す」といった口腔機能が、加齢によってわずかに低下した状態のことをいいます。

オーラルフレイルは、早期に発見して対策すれば、健康的な状態に戻すことができます。しかし、放置すると、さらなる口腔機能の低下や、全身の筋力低下につながるおそれがあります。特に、飲み込む力が低下することにより、食べ物や飲み物が誤って気管に入ってしまうことがあります。これを「誤嚥(ごえん)」といい、誤嚥によって口の中の細菌が気管に侵入することで誤嚥性肺炎を発症する可能性があります。
また、年末年始に高齢者が餅を喉に詰まらせて救急搬送されたり、お亡くなりになるという悲しい事故を耳にすることがあります。これは、かむ力や飲み込む力が低下した高齢者が、粘り気の強い餅を食べることで引き起こされる窒息事故です。

こうした誤嚥・窒息による事故を未然に防ぐためには、体からのサインを見逃さないことが大切です。まずはセルフチェックで、オーラルフレイルの早期発見・早期改善に役立ててください。

表1 オーラルフレイルのセルフチェック表※1

オーラルフレイルの予防と改善

オーラルフレイルの予防と改善には、「食べる(食生活の工夫)」「動かす(口や喉のトレーニング)」「整える(口腔ケア)」ことが大切です。

今回は、特に「食べる」についてご案内します。栄養をしっかり摂るためには、しっかり食べることから始まります。栄養を摂りつつ、安全に食事をするために、以下の点に気をつけていきましょう。

①正しい食事姿勢で食べる
 …椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、あごを引いて食べる

②一口の量を調整する
 …一度に口に入れる量を減らす

③よくかんで食べる
 …一口につき30回以上を目安に、ゆっくりよくかんで食べる

④バランスよく食べる
 …筋肉の元となるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)を意識し、特定の食品に偏らず多様な食材を摂る

毎日の食事でこれらを意識することが、いつまでも自分らしく、元気に過ごすための第一歩です。ささいな変化を『老化のせい』で終わらせず、毎日のお手入れと、おいしく食べる習慣を継続しましょう。お口の違和感や噛み合わせの不安は、早めにかかりつけの歯科医院へご相談ください。

当院では、「嚥下外来」を設置し、専門的な嚥下検査「VE(嚥下内視鏡)」や「VF(嚥下造影剤)」を実施した上で、言語聴覚療法士や管理栄養士によるリハビリテーション、栄養アドバイスまで行っています。

「嚥下外来」には、口から食べることが難しくなり、不安やもどかしさを抱えて来院される方がたくさんいらっしゃいます。私が管理栄養士として患者様に関わり始めた当初は、「まずは栄養をとってほしい」「3食しっかり食べられるように」と考えていました。しかし、多くの患者様と向き合う中で、皆様が本当に望まれていることは「一口でもいいから、好物をもう一度味わいたい」「食べる喜びを諦めたくない」という、切実な願いなのだと気づかされました。もちろん、栄養をしっかり摂ることは大切ですが、まずは今の生活の中で無理なく続けられる工夫を見つけて、一日でも長く、一回でも多く、「口から食べる喜び」を守るお手伝いができればと願っています。

 「以前より食べにくくなった」「むせることが増えた」など、ささいな変化でも構いません。お悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。専門のスタッフが、あなたの「一生おいしく食べる力」をサポートします。

引用
※1 公益社団法人日本歯科医師会リーフレット「オーラルフレイル」
イラスト:看護roo! 看護師イラスト集より(https://www.kango-roo.com/ki/)

筆者

医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院
栄養部 管理栄養士 川上 璃花

患者様とどのように接しているか

目線を合わせて患者様の意思を尊重できるように心掛けています

卒業した学校

高知県立大学

好きな食べ物

明太子